部長とヴィルジール

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「中へ入ろう。外は冷える」  ヴィルジールは自分の羽織っていた上着を、百合の肩にかける。 「ありがとうございます」 「ああ」 「どうぞ。温まりますよ」  ソファに座ると執事がココアを用意してくれる。立ち昇る温かい湯気と共にココアの香りが漂う。 「ありがとうございます」  気を利かせたのか執事は下がっていく。 「何があった?」  ヴィルジールは百合の顔を覗き込む。突然の至近距離に百合は動揺する。 「あ……」 「話したくないなら無理にとは言わないが……」  そう言いながら、眉間にシワが寄っていく。 「百合。この匂いは何だ? 私ではない男の匂いがする」  付き合っている訳ではないが、申し訳ない気持ちになり、ドクンと心臓が脈打った。  ヴィルジールの透き通った瞳に見つめられると、嘘はつけなくなってしまう。 「部長……かもしれません」 「何?」 「告白されました。手を握られて……」  百合はそれ以上言えなくなりうつむく。 「そうか……良かったな」 「え?」  うつむいた顔を上げると、ヴィルジールは泣きそうな顔をしていた。
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