13人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「中へ入ろう。外は冷える」
ヴィルジールは自分の羽織っていた上着を、百合の肩にかける。
「ありがとうございます」
「ああ」
「どうぞ。温まりますよ」
ソファに座ると執事がココアを用意してくれる。立ち昇る温かい湯気と共にココアの香りが漂う。
「ありがとうございます」
気を利かせたのか執事は下がっていく。
「何があった?」
ヴィルジールは百合の顔を覗き込む。突然の至近距離に百合は動揺する。
「あ……」
「話したくないなら無理にとは言わないが……」
そう言いながら、眉間にシワが寄っていく。
「百合。この匂いは何だ? 私ではない男の匂いがする」
付き合っている訳ではないが、申し訳ない気持ちになり、ドクンと心臓が脈打った。
ヴィルジールの透き通った瞳に見つめられると、嘘はつけなくなってしまう。
「部長……かもしれません」
「何?」
「告白されました。手を握られて……」
百合はそれ以上言えなくなりうつむく。
「そうか……良かったな」
「え?」
うつむいた顔を上げると、ヴィルジールは泣きそうな顔をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!