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両親が帰った後、白い薔薇の前に2人はいた。新太は百合の手を優しく握る。
「百合」
「はい」
「ありがとう」
「え?」
「奇跡を起こしたのは百合の力だろうな」
「私の?」
思わず目を瞬かせてしまう。
「百合の私への思いが奇跡を起こしたんだ」
「そんな……ただの普通の人間ですよ?」
「百合はロザリオに選ばれた娘だったからな。何か力があっても不思議ではない」
「そうなんですか?」
「ああ」
「何の力だとしても、こうして今ここにいてくれて嬉しいです」
「ああ……私もだ。あのまま会えなくなる覚悟をしたからな」
「ヴィル……新太さん」
新太はなかなか呼び慣れない百合を見てクスリと微笑む。
「呼び方なんて何でも良い。何なら愛称としてヴィルでもかまわない。私自身もまだ、慣れないしな」
「ありがとうございます……しばらくはヴィルさんで行きます」
「ああ……百合。これからもよろしくな」
「はい、こちらこそ」
新太は百合に満面の笑みを浮かべた。その様子を影から祝福していた者たちがいたのは言うまでもない。
ヴァンパイア。かつてそう呼ばれていたジョアン家の奇跡は、ヴァンパイア界の書物に記され、いつまでも語り継がれて行くだろう。
end.
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