本物

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「面白い……」  次の瞬間ベルナール・マルブランクは高速で動き、百合の所へ移動した。 「もともといけ好かない奴だと思ってはいたが……望み通り花嫁の血を頂いてやる」  ベルナール・マルブランクは牙を見せ口を開けた姿は、(まさ)しく蛇を思わせた。 「嫌!」  百合は思わずギュッと目を閉じる。 「止めろ!」  咄嗟(とっさ)にヴィルジールは百合の首を隠すように腕を回し、噛み付けないようにした。勢いよく腕を回したせいで、牙が当たりヴィルジールの腕に少し傷が出来てしまった。 「邪魔をするな!」 「駄目だ! 止めてくれ! 百合は……私の花嫁だ。血を吸うなら私の血を……」  百合から顔は見えないものの、ヴィルジールの声と腕が震えているのが分かる。その腕や声から必死さを感じた。 ――ヴィルさん? 助けてくれた。 「……馬鹿馬鹿しい」  半ば呆れたような口調でベルナール・マルブランクは言い放つ。 「何?」 「人間の娘に入れ込み(かば)うなど……お前は本当にヴァンパイアか?」 「ああ……もちろん」 「理解出来ない。安心しろ。今度こそもう、その娘には手は出さない。私にも花嫁はどこかにいるからな」  そう言い残すと方向転換し、窓からベルナール・マルブランクは去って行った。
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