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初めての感情
「あ、すまない」
未だに百合に腕を回していたヴィルジールは、百合から腕を離そうとした。
「あ!」
「何だ?」
「腕、怪我してるじゃないですか?」
「ああ……これか」
噛まれて破れた服の袖の隙間から血が滴り落ちている。
「この位大したことはない。気にするな」
「ちょっと待ってください!」
百合はヴィルジールの言うことを聞かずに執事やメイドを探しに行った。メイドに救急セットをもらい手当をしに戻った。
「じっとしててくださいね」
百合は消毒をして行く。
「うっ」
ヴィルジールは顔をしかめる。
「痛いですか?」
「まぁ、少し」
傷は小さいものの、鋭い牙により血が出てしまい痛々しい。
「すぐに終わりますから」
「ああ」
ヴィルジールは真剣に手当をしてくれる百合をそっと見つめた。
「百合」
「はい?」
「ありがとう」
「いいえ。ヴィルジールさんこそ、私のこと庇ってくれたじゃないですか。ありがとうございます」
百合はヴィルジールに笑顔を向ける。
「あれは、体が勝手に動いていた」
「え?」
「助けなければと無意識だった。こんなことは初めてだ」
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