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ロザリオの秘密
「どうすれば良いの?」
百合の耳にいつもの自分の声と違う声が聞こえる。
「百合様に花嫁になる決意をして頂き、ご両親に許しを得てサインを頂けば、助かります」
「そう……様子を見に行っても良い?」
「もちろんです」
百合は親にバレないようにこっそり家を出て、館へ向った。
館へ着くとヴィルジールはベッドに横たわり、苦しそうにうめきながら眠っている。百合はその姿に耐えきれず、一旦部屋を出た。
リビングで執事が紅茶を出してくれた。温かい湯気に優しい香りが漂う。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「今までお館様は一度も花嫁を迎え入れたことがありません」
「え? 一度も?」
「性格もありますが……お館様は根が真面目でお優しいな方なので、ロザリオで決められた相手と結婚するなんて相手に悪いからと、出会っても突き放していました」
「前にもそんな人が?」
「ええ。一人いました」
「そうですか……」
――いたんだ。
「しかし、その娘は別のヴァンパイアに奪われ、そのヴァンパイアと娘は結婚しました」
「結婚しないとどうなるんですか?」
「衰弱していきます。黒猫にも聞いたと思いますが、来週2500歳を迎える前に結婚相手を見つけご両親の許しを得なければ、消滅してしまいます」
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