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揺らぎ
執事は百合の言葉に柔らかな笑みを向ける。
「ええ。確かにヴィルジール様は良い方です。ヴァンパイアなのにどこか人間臭さを感じます。百合様、どうかヴィルジール様をよろしくお願い致します」
執事は百合に深々とお辞儀をした。百合はその言葉に返事が出来ずにいたが、不快ではなかった。それにこんな真夜中にこっそり家を出て様子を見に来るなんて、嫌いならする訳がない。
百合は再びヴィルジールの部屋へ行き、付き添った。
「ん……」
ヴィルジールはうっすらと目を開け百合を探した。
「百合……百合……」
ヴィルジールは掛け布団から手を出し百合を探す。百合はヴィルジールの手をそっと握った。
「はい! ここにいますよ。だから、元気になってください!」
ヴィルジールはかすかに目を見開き、安心したように再び眠りについた。次第に百合も眠気に襲われいつの間にか、ベッドに顔を付け眠ってしまった。
「ん……」
「百合」
ヴィルジールは百合の名前を優しく呼ぶ。
「え?」
――私、朝まで寝ちゃった?
寝ぼけまなこでヴィルジールを見ると穏やかに微笑んだ。
「そんな所に寝かせてしまいすまなかった。体は大丈夫か? 夢ではなかったのだな」
「ヴィルさん……大丈夫ですか?」
「ああ……私は大丈夫だ」
「良かった……」
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