揺らぎ

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「ありがとう、百合」 「いいえ。私、一度帰って学校へ行きますね」 「ああ。気をつけてな」    百合は家の玄関から忍び足で入った。その瞬間母親が姿を見せた。 「百合?」 「ママ」 「どこへ行ってたの?」  その口調は怒っているというよりは心配しているようだった。 「ちょっと……散歩へ」  百合は目を泳がせてしまう。 「……そう。パパには内緒にしてあげるから。ね、本当は彼氏の所にでも行ってたの?」  母親は百合にしか聞こえない声で囁く。 「うん……彼氏じゃないけど、彼の具合が悪くて付き添ってたの。ごめんなさい、心配かけて」 「良いわ。無事に帰って来たんだし。ほら、パパに見つかる前に朝食にしましょう」  学校へ来たものの寝不足なせいか調子がいまいちだ。百合は保健室で休むことにした。  保健の先生に断ってベッドへ横になると、あっという間に眠りの中へ吸い込まれて行った。  目を覚ますとちょうど昼休みだった。これからどうするか、お昼を食べに戻り授業を受けるか早退するか、考えていた時部長がやって来た。 「進藤さん」
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