気づいた気もち

1/2

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ

気づいた気もち

「好きだと言っていただろう?」 「はい。でも、逃げてきちゃいました」 「何故だ? すまない……私は今とても嬉しい」 「え?」 「百合が部長から逃げてきたことが。他の誰かのものになることを考えると苦しいのに……」  ヴィルジールの熱い眼差しが百合をとらえる。 「ヴィルさん……私、部長に告白されても嬉しくなかったんです。好きだったはずなのに、部長よりヴィルさんのことばかり考えちゃうんです」 「百合……これが好きということなのか?」 「きっと、そうです。私達、恋しちゃいましたね」  百合はクスっと微笑んだ。 「ああ、そうだな」  ヴィルジールは百合に優しく微笑みながら手を掴んだ。 「……良かったですね、ヴィルジール様」  突然執事が現れる。執事はかすかに涙ぐんでいる。 「いっ、いつからいた!?」 「少し前です。ハーブティーをお持ちしたのですが、お取り込み中でしたので、お待ちしておりました」  執事はヴィルジールにお辞儀をする。 「少し早かったな」  冷ややかな声で執事につぶやく。 「これは! 私としたことが! 失礼致しました」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加