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気づいた気もち
「好きだと言っていただろう?」
「はい。でも、逃げてきちゃいました」
「何故だ? すまない……私は今とても嬉しい」
「え?」
「百合が部長から逃げてきたことが。他の誰かのものになることを考えると苦しいのに……」
ヴィルジールの熱い眼差しが百合をとらえる。
「ヴィルさん……私、部長に告白されても嬉しくなかったんです。好きだったはずなのに、部長よりヴィルさんのことばかり考えちゃうんです」
「百合……これが好きということなのか?」
「きっと、そうです。私達、恋しちゃいましたね」
百合はクスっと微笑んだ。
「ああ、そうだな」
ヴィルジールは百合に優しく微笑みながら手を掴んだ。
「……良かったですね、ヴィルジール様」
突然執事が現れる。執事はかすかに涙ぐんでいる。
「いっ、いつからいた!?」
「少し前です。ハーブティーをお持ちしたのですが、お取り込み中でしたので、お待ちしておりました」
執事はヴィルジールにお辞儀をする。
「少し早かったな」
冷ややかな声で執事につぶやく。
「これは! 私としたことが! 失礼致しました」
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