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「お館様……」
執事が去るのと入れ違いに黒猫が現れる。
「黒猫……」
「百合様と幸せになってください」
ヴィルジールに向かって小さく頭を下げる。
「黒猫さん……」
「ああ、ありがとう」
ヴィルジールは黒猫の頭を撫でる。黒猫は気持ちよさそうな顔をした。
2人で話をして両親の許しを得ようと翌日、土曜日。2人で両親の許しを得に行った。
「ヴァンパイアと結婚したいですって?」
母親は顔面蒼白になっている。
「うん。私まだ16だし、結婚はすぐにって訳じゃないの。彼を救うために許しが欲しいの」
重たい空気を感じながらも百合は話す。
「駄目に決まってるだろう」
父親は普段は娘に甘い方だが、異性関係となると別人のように厳しくなる。そのまま元の顔に戻らないのではないかと思われるほど、深いしわが眉間に寄っている。
「……お義父様」
ギロリと鋭い目付きでヴィルジールを父は睨む。
「パパ! そんな顔しないで話を聞いて」
「聞く話なんてない!」
父親は立ち上がり出ていこうとする。
「パパ! 命がかかってるの! 彼を助けたいの!」
「お義父様。ヴァンパイアがお嫌いなのは分かります。ですが、私達一族は血は吸いません」
「……駄目なものは駄目だ!」
部屋のドアの前で立ち止まると振り返らずに出て行ってしまった。
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