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その時ドアが突然開き両親が現れた。
「百合!」
「パパ、ママ……」
0時ぴったりになってしまい、ヴィルジールは消え始める。
「遅くなってごめんなさい。サインをしに来たんだけど……」
そこで状況を察し言葉が途切れてしまう。
「あと、少し早ければ……」
百合の頬を静かに涙が伝う。ロザリオに涙が当たり、その瞬間ロザリオが光始めた。
ヴィルジールの体は光に包まれ、館全体にまで広がり続けた。光が落ち着くと、そこにいたのは黒髪に黒い瞳、血色の良い肌。温かい体温に元気に動く心臓。ヴィルジールは百合と同じ人間になって戻って来た。
「百合……」
「ヴィルさん……良かった!」
両親の前にも関わらず、百合はヴィルジールの首に腕を回し、抱きついた。
「なんと……これは!」
執事も驚いている。
「私達まで人間になりました!」
使い魔の黒猫も人間になったようだ。猫のような瞳のまま15歳位の少年の姿だ。
「皆さん……」
「このようなことは今までありませんでした」
執事は言う。
「人間になってしまって大丈夫ですか?」
百合は心配になり聞いてみる。
「ええ。そちらは問題ありません。ジョアン家は親戚もいますから」
「そうですか」
「百合」
「ヴィルさん……体は何ともないですか?」
「ああ。大丈夫。百合、こんな深夜に付き合わせてすまない。帰って休むと良い。お義父様、お義母様、百合さんをお願いします」
「……ええ。分かったわ」
父親と母親は顔を見合わせ、母親が答え父親はうなずいた。
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