奇跡

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 それから数日して百合は部長にきちんとお詫びをした。 「この間はごめんなさい」  百合は頭を下げる。 「ああ、いや、僕の方こそいきなりあんなこと言ってごめん!」 「部長……」 「彼とは上手く行ったの?」  全てを見透かしそうな瞳を百合に向ける。 「え?」 「好きなんでしょ?」 「はい」 「その赤く染まった頬が僕に向けられたものなら良かったけど……しょうがないよね」 「部長……」 「ほら、そんな顔しないでさ。幸せになりなよ」 「はい!」  ヴィルジール達は人間になり、ヴァンパイア界で急遽(きゅうきょ)戸籍などを用意することになった。  与えられた人間名は黒岩 新太(くろいわ あらた)。  百合の父親は2人のことを許し、しっかり謝ってくれた。 「この間はごめんな! 2人のことは認めよう。ただ、結婚は高校を卒業するまで待ってほしい」 「パパ! ありがとう! ヴィルさん……じゃなくて、新太さん! 良かったね!」 「ああ」 「新太君は、これから人間として生きるから、人間として生きるのに必要なことは、俺が教えよう」と父親は名乗り出る。 「ありがとうございます! お義父様!」 「お義父さんで良い。様って柄じゃないから」 「お義父さん!」 「パパ!」 「良かったわね。2人共」  母親は嬉しそうだ。  館の庭に咲いていた真っ赤な薔薇は、白い薔薇に変化した。彼は25歳になっていた。    ジョアン家に起きた奇跡、それはヴァンパイア界に広まり、人間を愛するヴァンパイア達の希望となった。
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