ヴァンパイア

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 少女は思い切ってカーテンを開けると、暗闇に黒猫がいた。“中へ入れて”というような仕草をしている。 ――可愛い!  可愛さに負け思わず中へ入れると、黒猫は言葉を話した。 「どうか、お願いします」 「え?!」 「お館様の花嫁になってください!」 「ちょっと待って……! 何で、猫が喋るの〜!」 「私は、お館様にお仕えする使い魔です」 「そう……。って、そうじゃなくて!」 「駄目でしょうか?」  うるうるとした瞳で見つめて来る黒猫に、少女はいたたまれなくなる。 「ごめんなさい! 好きな人がいるから」 「そうですか……」  明らかにしょんぼりしている。けれど、黒猫は動こうとしない。 「ねぇ?」 「はい!」 「……帰らないの?」 「……帰れません。あなた様が花嫁になると仰ってくださるまでは!」  少女は密かにため息をつきながら黒猫の為にミルクを用意した。 「はい。良かったら飲んで?」 「え?」  黒猫は予想外だったのか、大きな丸い瞳を見開いている。 「お腹空いているかと思って。それから、そこにクッション置いたから眠るならそこで寝てね」 「花嫁様……」 「違うから! 今晩だけだからね!」
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