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帰れない
翌日の放課後。
書道部へ行くと憧れの先輩がいた。先輩は部長でとても凛々しい字を書いている。席へ着き、しばらく自分の筆に意識を集中させる。
「進藤さん」
不意に部長に名前を呼ばれた。
「はい!」
「進藤さんはとても伸び伸びとした字を書くね」
「あ、ありがとうございます!」
部長はいつの間にか進藤 百合の机まで来ていた。
少女は進藤百合。16歳の高校生。背中まである長い黒髪を2つに縛っている。美人ではないが可愛らしい雰囲気を持っている。
部長は百合の憧れで実力もあり後輩達に人気がある。そんな部長に突然声をかけられ驚いた百合の頬は赤く染まった。部長は百合の様子を見て優しく微笑んだ。
百合は部活を終え外へ出ると空を見上げた。今日は月がない。校門を出るとどこからか黒猫が姿を現した。百合は関わりたくないため、早足で通り過ぎ家へと向かうがまたもや家へ帰れない。同じ所をぐるぐる周っているような感じがする。
「ちょっと!」
百合は我慢が出来ず後ろを付いてくる黒猫に声をかけた。
「はい、何でしょう?」
「これってあなたの仕業?」
「何のことでしょう?」
黒猫はとぼけでいるのかこちらに質問を返して来る。
「家へ帰れないんだけど!」
「それはもちろんですよ。あなた様は花嫁として選ばれたのですから」
黒猫は百合を見上げ答えた。
「どういうこと?」
「あなた様が花嫁として受け入れて下されば帰れます」
黒猫はペコリと頭を下げた。
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