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意外なこと
百合は空腹を感じ、鼻をくすぐるスープやハンバーグの香りに耐えきれず、料理を口へ運んだ。ハンバーグは柔らかく肉汁が溢れ、デミグラスソースがほどよくからまっている。
「美味しい……」
「お口に合ったようで何よりです」
近くに控えている執事が反応する。
食事を終えるとヴィルジールは話し始めた。
「昨日は驚かせてすまなかった……ヴァンパイアは怖いか?」
思いのほか優しい口調に柔らかい眼差しを、百合に向ける。
「はい。血を吸いますよね?」
「いや。現代のヴァンパイアは血を吸わないんだ」
「え……?」
「古代のヴァンパイアはもちろん吸っていた。それはそれは恐れられていた。退魔師もいたしな……。ところが、ヴァンパイアの中に血を飲むと短命になる者が増え始めた。そしてジョアン家にもそういう者が増え、今や血を吸うヴァンパイアはほぼ絶滅したと言えよう」
「それじゃあ、あなた達は人間みたいな者なんですか?」
「いや。正確には体はヴァンパイアとして産まれているから、ヴァンパイアだな。ヴァンパイアに合う特別なサプリメントを飲むことで、健康を保てるんだ」
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