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「どうして、花嫁が必要なんですか?」
「ヴァンパイアだけで結婚していくと、近親婚になっていく。やがて遺伝子に異常が起きて弱体化して行くんだ。だから、定期的に人間の娘を迎え入れ子孫を残していくんだ」
ヴィルジールは百合の反応を探るように見つめた。
「そうですか……」
「花嫁になってくれるか?」
話を聞いた所で簡単にうなずける訳がない。
「……ごめんなさい」
「何故だ?」
ヴィルジールは本心から分からないというような顔をしている。
「何故って……結婚は好きな人としたいんです!」
「好きな人? なんだそれは?」
「……好きな人と言うのは、その人がいるだけで嬉しくて幸せで、自分よりも大事にしたいと思う人です」
「……分からないな」
「2400年も生きてきて……」
「駄目なのか?」
「いいえ。駄目ではありません……ただ、驚いただけです」
「そうか。ところで、好きな人というのが君にはいるのだろう?」
「はい」
「そのせいで結婚出来ないのだろう?」
「理由はそれだけじゃないですけど……」
「分かった」
「え?」
「帰って良い。黒猫。送ってやれ」
「かしこまりました」
黒猫がどこからか現れる。
「お邪魔しました。ごちそうさまでした」
「気をつけてな」
ヴィルジールはこちらに顔を向け切なげな瞳を見せた。
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