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5日目 地図
祖父曰く、誕生日にプレゼントされた地図は本物の宝の地図らしい。少年はその言葉を疑わなかった。祖父は嘘を言ったことがない。
しかし地図を渡す時、常に笑顔の祖父が僅かに顔を曇らせ、何かを心配しているように付け加えた。
「いいかい、この地図は本物だよ。何が見つかってもこの地図が本物だという事に変わりは無い。そう信じてくれ。ワシもお前さんがやり遂げてくれると信じているから」
「もちろん、おじいちゃん。任せてよ」
胸を張って答えた少年の言葉に、祖父はいつもの笑みを取り戻していた。
宝探しは難航した。地図は古く、目印となるものは殆ど無かった。しかも時代も国もばらばらで、読み解くことすら何年もかかった。
宝を見つけた頃、少年は老人になっていた。
少年だった老人は、祖父と同じ位の歳になった自分を感慨深く思いながら、宝が入っているであろう鉄の箱を開けた。
中身を見て老人は狼狽え、怒り、がっかりした後、吹っ切れたように笑い始めた。
そして自分の孫の少年に、箱の中に入っていた地図──全く別の場所を指し示している地図を手渡そうと決めた。
いいかい、この地図は本物だよ。そう信じて探すんだ──。
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