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1日目 夢
獏は真剣に悩んでいた。
昨日の夜、何度も数え直したのだ。大好物の夢を全部で31個、テーブルの上にずらりと並べて端から数えた。だから間違えるはずが無い。
しかし今、目の前にある夢は明らかに足りない。
誰かが家に忍び込んで盗んでいったのかと疑ったが、その形跡も無い。鍵は全て閉まっていたし、そもそも夢を盗んでいく泥棒なんているのだろうか?
うんうん唸りながら頭を抱える獏は、ノックの音がしていることに気がついた。
扉から顔を覗かせたのは、見知った夢魔だった。
「やぁ、久しぶり。たまには遊びに行こう……って、何で泣きそうな顔してるんだ?」
「夢魔君……実は大切に取っておいた夢が無くなってしまったんだ。君、知らない?」
夢魔は歯切れ悪く、気の毒そうに切り出した。
「悪いけど、俺は知らないなぁ」
「そっか……。それにしてもどこに行っちゃったんだろう、僕の夢……」
悲しそうに項垂れる獏に、夢魔はなんと声をかけようかと考える。
──だってこいつ、夢遊病だもんなぁ。
たぶん知らない間に獏が食べてしまったであろう夢について、どう説明しようか。夢魔も一緒に途方に暮れた。
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