コンピューター人間

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*  いやぁ、脳をコンピューターに移植するのは簡単じゃなかった。  あーしは27歳で研究機関に就職して外科医や機械学習の専門家とチームを組んだけど、ネズミの脳をコンピューターに移植するのに、最新の量子コンピューターを使っても10年かかったよ。  しかも移植の成果は低かった。コンピューターになったネズミの挙動は不安定だった。  なので、このペースだとあーしが現役の間に人間の脳をコンピューターに移植するのは無理だと思ったね。  これじゃ、あーしはジョニーを助けられなくね? って。  そこであーしは考えた。研究するための時間が足りない? なら寿命を延ばせばいいじゃない。  つまり、可能な限りの不老不死を作り出せばいいんだ。  実はそれは難しいことじゃなかった。だって大昔からそういう研究はされていたから。  どうするかって?  人体から脳だけ取り出して特殊な人工髄液に浸し、脳にインターフェースを取り付けてコンピューターに接続すればいい。  脳も老化するだろうけど適切に栄養や薬剤を与えてやれば、300歳くらいまでは生きられるだろうと考えた。  だって、北極海に棲むニシオンデンザメは300歳を優に超える個体もいるからね。  なので、あーしは世界有数のコンピューター企業と共同で開発に取り組んで、あーしが45歳の時には実用化出来たよ。  ちなみに、実用化第一号はあーし。  脳を取り出され、体を失ったあーしは、脳に接続された仮想現実内のアバターを使って、リアルのロボットと同期し、引き続き人間の脳をコンピューターに移植する研究を進めることが出来たってわけ。  いやぁ、この「脳人間」はブームになったよ。  世界中の科学者、富裕層が私も僕もって言って脳人間化した。  あとアメリカが貧困対策の政策で取り入れたよ。  22世紀になるとアメリカ政府のブレインは官僚じゃなくAIになっていて、貧困層が望むなら脳人間化すれば犯罪も自殺も防げて、社会問題の多くを解決出来るって提言して、AIが法制化したよ。  脳人間は仮想現実内で生きるから、働かなくていいし一生VRゲームみたいな生活を楽しめるしね。  それで、あれよあれよと脳人間化は広まり、世界には20億の脳人間が誕生したよ。
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