コンピューター人間

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 ねぇ、ちょっと聞いて欲しいの。あーしがを発見した話を。  あーしの名は、みゆぅ。よく馬鹿っぽいって言われるけど、こう見えてあーしはノーベル生理学・医学賞の受賞者なの。  専門は脳神経科学だよ。  え? あーしがノーベル賞もらった経緯を知りたい? いいよ。  あれは200年前のこと。25歳で大学院生だったあーしには愛する彼氏がいた。  彼の名はジョニー。ジョニーは28歳の宇宙生物学者だったの。  当時は21世紀で、宇宙関連で画期的な発見があったよ。  それはNASAが、地球から0.15光年先の宇宙に、直径8万kmのドーナツ状の発光物体を発見したこと。  恒星とは思えないのに20等級の明るさを保つ不思議な物体で、人工物じゃないか? って大騒ぎになったよ。  それで、その宙域はX宙域と名付けられ、NASAが探査機を飛ばしたの。  探査機は毎秒50kmで進むから、目的の宙域に辿り着くには千年はかかるけれど、知的生命体の発見を期待して、地球は興奮に包まれていたよ。  ジョニーも例外じゃなかった。「千年後にはオレは死んでるけど、生きている間にX宙域を観測するぜ!」って目を輝かせてた。  あーしはそんなジョニーにくびったけだったの。  でもね、ある日、ジョニーの脳に悪性腫瘍が見つかって……。  ジョニーはお医者さんに、「5年生存率は10%で、余命は僅かだとお考え下さい」って言われたよ。  彼は本当に辛そうで、「死ぬことよりも、X宙域の研究を続けられないことが悔しい」って言ってた。  だからね、あーしは彼のために全財産をはたいてプレゼントを用意したんだ。  それはね、人工冬眠だよ。  ジョニーの脳腫瘍が治せる未来が来るまで、彼は人工冬眠で眠るの。  と言ってもあーしの財産じゃ5年分の冬眠しか買えなかったから、ずっとあーしが料金を払っていかなきゃ維持は出来ないんだけどね。  でも、彼が生きられる未来のためならあーしは貢ぐことに迷いはなかった。  彼はあーしに「本当にありがとな。愛してる」って言ってポッドの中で眠っていったよ。  それで、彼と別れた後、あーしには目標が出来たんだ。  あーしは、もし未来が来ても彼の脳腫瘍を治せる技術が発明されなかったら? って考えた。  ジョニーはX宙域の研究をしたがっている。なら、プランBも考えておくべきじゃね? って。  だから、あーしは研究に没頭したんだ。  何の研究かって?  それはね、人間の脳をコンピューターに移植する研究だよ。
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