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分岐
アイツが仕事に行って、5日も帰って来ない。
まさか蟲人にヤられてしまったなんてこと、、、
そんなことあるはずがない。
探しにいこうか、
でもアイツは俺が外に出るのを殊の外嫌がるからなぁ。
あの蟲人はアイツしか倒せない、アイツのメシの俺が死んだら、アイツはこの星を出ていく、そうなったら??
ん?俺が死んだ後ならいいのか?
だめだな、うん、ダメだ、だめということにしよう。
よし、アイツを探しに行こうか。
そういえばこの建物から出るのは、どれ位ぶりだろう?半年?半年か?
逆によく出なかったよなぁ。
でもオレの最長室内記録は1年と半年だ、まだ行けるな。
あの山で硯田1等陸尉が亡くなってから自衛隊員を辞めて家から出なかったからなぁ。
親戚の叔父に警備員の仕事を紹介してもらわなかったら、今でも記録更新してただろうな。
記録更新にはまだ遠いな。
それにしても、この建物内はなんでも揃っているから、外に出なくても気にならなかったなぁ。
スーパーに服屋、理容室、本屋、ビデオ屋、コンビニとかもある。
それとジムに温水プール、屋上は公園になっていて、犬、猫やインコまでいる。
まぁ犬や猫は、ここら辺一体に避難勧告が出た時取り残された動物たちなんだって飼育してた自衛隊員さんが言ってたな。
それに、ここは特区内だし。蟲人が襲ってきてもおかしくない、ただ目眩しの処置を施していて気が付かれにくくしているだけだ。
だから危険かどうかと言えば、間違ったら蟲人が侵入してくるくらいの確率らしい。
それってどれくらいの確率だよって話しだよな。
俺が立ち上がって玄関まで行くと、俺がドアノブに手をかける前にガチャッと玄関の扉が開いた。
アイツが自衛隊員に両脇を支えられて帰ってきた。
「なにがあったんですか」
慌てて自衛隊員に聞く。
「はい、大型の蟲人が現れまして、倒すのに時間が掛かってしまったんです」
自衛隊員が困り顔で答えた。
「大型?コイツ怪我したんですか?」
「いいえ、ディアロプスさんはお強いので怪我はしていません、我々自衛隊員に怪我人が出ましたけど、今回は特別です、大型の倒し方も分かりましたので、次は大丈夫だと思いますよ」
「そうですか、なんでコイツ動けないんですか」
ディアロプスを指差した。
「それは、」
ぎゅるぎゅるぎゅるディアロプスの腹の音が鳴る。
「あっ、はい、5日間もう絶食してたらこうなりますよね、預かります」
自衛隊員からディアロプスを渡された。
「では、失礼します」
2人の自衛隊員は帰った。
ディアロプスをソファーまで連れて行って寝かせた。
ベッドにある肌掛けを持ってくるためとソファから離れようと1歩踏み出す。
手を強く引かれて、手に痛みと共に熱が体中に広がった。
ガツガツと指から食う。
いつもと違う。今までは食いちぎって、再生の余地を与えるのに、今は再生しているところから食ってくる。
痛みと相まって恐怖が込み上げてくる。ドクドクと心臓が不安を押し上げる。
俺を食い遊ぶ時はもっと言葉で虐めて来るのに、今はちがう、目が俺を見てない。
捕食者だ。怖い。
アイツが5日分食い終わるまでそれは続いた。
そのまま寝て、起きたのは2日後。
何かに気がついて起き上がる。
「おい」
俺が声をかけても気が付かない。
そのまま素早く身支度だけ済ませて、俺に齧り付いて食事をして、アイツは出かけようと玄関のノブに手を掛けた。
俺はアイツの袖を引く。
「離せ、成蟲が出た」
声が不機嫌そのものだ。
「俺を連れてけ」
「ダメだ、連れていかない」
「また、食えない日が続いたら、どうするんだよ」
「、、、。」
アイツは顔を思いっきり顰めて俺の手首を持ち、肩に反対の手を俺の肩に置いて押さえ勢いよく腕を引きちぎった。
ぐぁぁぁぁぁっ
玄関のたたきに膝をついて肩口を押さえ額をタタキに押し付け短く息をする。ハッ、、ハッ、、
「オレはコレがあればいい、ここで待っとけ」
アイツは俺の腕を振る。
涙がポタポタと落ちる。じわりと嫌な汗が出る。
肩からじわりじわりと再生し始めている。
アイツはドアノブを回す。
俺はアイツのズボンの裾を引く。
「待てよ、1本で足りるのか、俺を連れてけ」
アイツはイラッと短くため息をついた。
アイツはしゃがんでもう片方の手首を持ち、もう片方の手を肩を押さえて徐々に引き裂く力を肩にかけてくる。
一気に引きちぎった時よりも、恐怖を呼び起こす。徐々にちぎれる肩、さっきより数倍の時間をかけて引き裂く。
お漏らしをして、玄関のたたきがぬれる。
俺はたたきに倒れ込んだ。
ちぎられた二本の腕を持ち、玄関のたたきに涙と小水と鼻水とヨダレとでぐちゃぐちゃになった俺をアイツは見下した。
「これで満足か」
冷たい声が降ってきた。
涙でアイツは見えない。
アイツが去って行こうとする気配がして俺はモゾモゾと動いてアイツのズボンの裾に齧り付いた。
「離れろ」
「オ、俺を連れてけ」
「まだ言うか、次は右足を引きちぎろうか、それとも左か、より苦痛だぞ」
「俺を、連れてけ」
「お前がここに居てくれれば安心して戦えるんだ」
「俺を連れてけ、ソ、そもそも、それが、マ、間違ってんだよ」
「オレは、オレはおまえに死なれたくねえんだよ、あんな思い二度としたくない」
最初に引きちぎった方の腕がほぼ再生して、俺は体を起こしてティーシャツで顔を拭う。
「ディーの特殊スーツにロプを保護してるだろ」
「保護じゃねぇよ、、安置だ。
こんな時だけ名前を呼びやがって、
ズリィよ」
「頼む、俺を特殊スーツの中に入れてくれ、初めて会ったあの日、意識を失った俺をスーツの中に入れてたんだろ、お願いだから」
ディーが肩を落として盛大なため息をつく。
「全く、絶対スーツから出るなよ」
「わかった、ディーの食事の時以外なっ
支度して来るから待ってろよ、置いてったら、もう俺を食わせないからな」
支度が終わって玄関に行くとちゃんと待っててくれた。ちょっとホッとした。
「お待たせ、じゃあ、行くか」
ディーは特殊スーツに着替えていた。
「あぁ」
ディーは歩き出した俺の手を引いてよろけると、後ろから抱き止められる。
俺の肩に顎を乗せてた。
「なんだよいきなり」
「、、、さっきは痛くしてごめん」
「いいよ別に、ディーが俺を守りたくて、、あんなことしたの分かってるから」
「うん、ディーって呼んでくれて嬉しい、じゃぁコレも受け取って」
ディーが左耳の耳たぶを齧った。痛みと熱が広がっていく。
ディーが耳に何かした。
耳たぶに違和感があり、触るとチャリンと音が鳴った。
「ピアスか」
「あぁ、オレの物っていう印な、俺の鱗で作った」
ディーが微笑む。今までにないとても優しい顔だ。まるで愛しい人を見るような。
「ありがと、俺も何かあげたいのに、何も用意してない」
「いっぱい貰ってる、アロ自身をアロは美味しいから、また食べたい」
「いつでも食えばいいだろ、でも左耳はダメな」
「えっ食うよ」
「ダメだ俺のピアスが無くなる」
「何度でもつけてやるよ」
「ピアスは食うなよ」
「どうかな、アロがいい子だったらな」
「はあ”⤴いい子ってなんだよ」
ディーがニヤリと口角をあげる。
俺の耳に顔を寄せて二股の舌を左耳に這わせた。
ンッ、ぁあ
甘い吐息が漏れる。
「新しい耳にピアスをつける時は、凄く痛くしてあげようか、アロ痛くされるの好きだから」
痛みでイクように調教された俺は想像して素直に反応した。
ディーの胸に縋り付く。
ディーが俺を抱き締めて俺を仕舞う。
その時にチャリンとピアスが揺れて
涼やかな音がした。
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