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彼方とは別々の大学に通うようになり、大学卒業後に俺は地元で薬剤師になった。
地元では、上京した彼方が"芸能人になったらしい"とか"新宿ナンバーワンホストになったらしい"など様々な噂が立っていた。
根も葉もない噂話で盛り上がる地元の知り合い達を他所に、彼方は東京でプロボクサーになった。
抜群の運動神経で勝ち上がり、ある年には4階級制覇を果たして一躍時の人となった。
けれど栄光の日々は長くは続かなかった。
バイク事故をきっかけに腕の不調を訴えて、あっさりと引退を表明したのだ。
スマホの通話越しに聞こえる声は、酷く沈んでいた。
サンダルをつま先だけ引っ掛けてベランダに出る。
「地元、帰ってきたら?」
俺が静かな口調でそう告げると、彼方は少し間を置いて「此方ってさ……」と、何か言いかけた。
そのときだった。
未だかつて見たことのないような光を放って、空から月が忽然と姿を消した。
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