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生徒も先生もいない夜中の学校は、とても静かだった。屋上へと続く階段を登る、僕の足音だけが校舎に響いている。
たぶんもう午後11時を過ぎた頃だろう。こんな時間に何をしに来たかって?目的はただ1つ。あと何歩か歩けば達成できる。
もうどうでもよくなったんだ。何もかも、全部。
屋上に出ると、立派な満月が僕を出迎えた。
そういえば、僕の学校には代々伝わる都市伝説のような噂があった。
『満月の夜、誰もいない学校で願いを呟くと、その願いが叶う』
馬鹿馬鹿しい、と僕は思った。そんなことで願いが叶うなら、僕の学校生活はもっと違うものになっていたかもしれない。
手すりに手を掛けて、僕は空を見上げた。
学校は嫌いじゃなかった。ただ僕は、
「……友達が欲しかった」
無意識にそう呟いていた。
でももう、そんなことはどうでもよかった。僕は今から、人生の幕を閉じるのだから。空気のように過ごした2年半、いや正確には約17年半。それももうすぐ終わる。
「なるほどね」
手すりを乗り越えようと身を乗り出した時、背後から声がした。
「じゃあキミさ、俺と友達になろうよ」
僕は驚いて後ろを振り返った。そこには、僕と同じ制服を着た男子生徒が立っていた。月明かりに照らされたその顔は、爽やかなスポーツマンといった感じだった。
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