第五章・十万年の安寧とその代償

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「ハウスト、どうかしましたか?」  私も港町を見下ろしました。  港町の通路にはたくさんの人が行き交っています。  遠目に見ると人々が出歩いている姿に見えましたが。 「え?」  人影に違和感を覚えました。  凝視してその姿をたしかめる。人影は人間の形に似ているけれど、それはっ……。 「う、嘘ですっ……。これはどういうことですか……!」  声が震えました。  だって人間だと思った人々は異形の怪物の姿をしていたのです。  港町のあちらこちらに異形の怪物が歩いていました。まるで怪物しかいないかのように、当たり前のように。 「ハウスト、これは……」 「ああ、人が見当たらない。おそらく」 「港町の人々が怪物になったというのですか……?」  全身の血のけが引きました。  それはあり得ない話ではないのです。  さっきの遺跡で人々が次々に怪物になった光景を目にしました。そしてこの港町の人々もすでにヨーゼフを崇拝しているとしたら……?  思いだすのは港町に泊まった夜に目にした光景です。たくさんの人々が広間に集まって祈っていました。 「ブレイラ、あそこに逃げてる人がいるみたいだ!」  ゼロスがハッとして港町の路地裏を指差しました。  路地裏には若い男が怪物から一人で逃げています。  その見覚えのある姿に息を飲む。あれはルーク。宿の孫息子です。 「あれはルークです! ルークが追われてるんです!」 「ほんとだ! 僕、助けに行ってくる!」  ゼロスが上空の巨大ツバメから飛び降りました。  空中でくるりっと回転して地上に着地します。  ゼロスは周囲の怪物をあっという間に蹴散らして逃げていたルークを助け出しました。 「俺たちも行くぞ。ブレイラ、俺から決して離れるな」 「はいっ」  私が頷くと、ハウストの魔鳥が地上へと降り立ちます。  イスラやクロードが乗った召喚獣も降り立ちました。
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