第九章・四界の王たる者、その矜持

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 しかしおどおどしてしまうのはクロードだけで、ハウストとイスラとゼロスは平然としている。 「俺を知っていたなら丁度いい。この村のことが知りたい。ここに勇者の宝があると聞いた」 「もちろんです。どうぞこちらへ。ご希望にそえるかと」  長老はそう言うと神殿の中に入っていく。  そのあとにイスラとハウストとゼロスも続き、クロードも慌てて追いかけた。  クロードはハウストの足元にぴたりとくっついて歩く。  ハウストは少し邪魔そうに見下ろしているが、クロードだって好きで足元をうろちょろしているわけではない。いつもならこういう時はブレイラが手を繋いでくれるのだから。  クロードはハウストにこそこそ話しかける。 「ちちうえ、ちちうえ」 「なんだ」 「みみ。みみかしてください」  しゃがんでくださいとお願いするクロードに、ハウストはため息をついて上肢を屈ます。 「なんだ」 「このむら、だいじょうぶなんですか? ここってのろわれてるんですよね。こわいところじゃないんですか?」 「そうだったとしても何かが分かるならそれでいい。安全な場所で得られるものには限界がある」 「そうですけど……」  それはクロードも納得できるものだった。  だが。 「お、おばけのしんでんみたいです……」  案内された村の神殿は薄暗くて不気味だった。  手入れは行き届いているが、いかんせん古い。古い石造りの建物は薄暗くて埃臭くて、壁だって今にも崩れ落ちてしまいそうなところがある。 「勇者様、こちらが書庫でございます。お休みになる時は隣の部屋をご利用ください。掃除は行き届いておりますが、なにか不便がありましたらお知らせを。宝は明日ご案内いたします」  長老はそう言うとイスラたちを残して神殿を後にした。  イスラ達は神殿の書庫に残される。  書庫には天井まで届く書棚が整然と並び、そこには数えきれないほどの書物が保管されていた。  書物の中には百年以上も開いていないような放置されたものまである。あくまで神殿の手入れは最小限なようだ。
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