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「ハウスト、どうかしましたか?」
私も港町を見下ろしました。
港町の通路にはたくさんの人が行き交っています。
遠目に見ると人々が出歩いている姿に見えましたが。
「え?」
人影に違和感を覚えました。
凝視してその姿をたしかめる。人影は人間の形に似ているけれど、それはっ……。
「う、嘘ですっ……。これはどういうことですか……!」
声が震えました。
だって人間だと思った人々は異形の怪物の姿をしていたのです。
港町のあちらこちらに異形の怪物が歩いていました。まるで怪物しかいないかのように、当たり前のように。
「ハウスト、これは……」
「ああ、人が見当たらない。おそらく」
「港町の人々が怪物になったというのですか……?」
全身の血のけが引きました。
それはあり得ない話ではないのです。
さっきの遺跡で人々が次々に怪物になった光景を目にしました。そしてこの港町の人々もすでにヨーゼフを崇拝しているとしたら……?
思いだすのは港町に泊まった夜に目にした光景です。たくさんの人々が広間に集まって祈っていました。
「ブレイラ、あそこに逃げてる人がいるみたいだ!」
ゼロスがハッとして港町の路地裏を指差しました。
路地裏には若い男が怪物から一人で逃げています。
その見覚えのある姿に息を飲む。あれはルーク。宿の孫息子です。
「あれはルークです! ルークが追われてるんです!」
「ほんとだ! 僕、助けに行ってくる!」
ゼロスが上空の巨大ツバメから飛び降りました。
空中でくるりっと回転して地上に着地します。
ゼロスは周囲の怪物をあっという間に蹴散らして逃げていたルークを助け出しました。
「俺たちも行くぞ。ブレイラ、俺から決して離れるな」
「はいっ」
私が頷くと、ハウストの魔鳥が地上へと降り立ちます。
イスラやクロードが乗った召喚獣も降り立ちました。
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