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9月2日になった。しかし、この残暑と大学生の夏休みはまだまだ終わらない。今日から俺の二度目のインターンが始まる。
今回の所は、選ぶまでもなく目を付けていた企業だ。なにしろ、益盧先輩が就職した企業なのだから。当の先輩は出張中という事で、先輩の下でインターンを受けることはできないが、ホワイト企業であること信じ、精力的に取り組んでいく所存である。
会社に到着。ゲートには「ヘブンス食品コーポレーション」と書かれている。この企業は「ヘルス食品カンパニー」と事業内容が似ており、こちらも日本の食料自給率を支える要の企業だ。異なる点は、この企業は企画による特産品や食品の売り出し方が持ち味であることだ。無名のイチゴ農家さんが有名スイーツシェフとコラボしたり、倒産寸前の畜産業者さんが大企業の新作に起用されて、持ち直したりした経歴がある。安全性や味は確かだけれど、マイナーだったり窮地だったりする一次生産者の救い手になる企業として支持されており、俺としても興味がある。
インターン一日目の始まりは、午前に企業説明を聴くという流れで前回と同じだった。昼休みを経て、俺等は企画営業部1課に通された。この課の社員は7人。オフィスは整然としていて、清潔感があった。
「皆さんにはチームを組んでもらい、実際の案件に対する企画を行ってもらいます。それぞれのチームには、案件を抱えた担当者が一人ずつ付きます。担当者はサポートをしますが、メインの企画は皆さんで協力して進行させてください。好評を得られた企画は、営業にまで成就するかもしれませんよ」
俺等のオリジナリティとチームプレーが要求される活動内容だ。やる気が湧き上がってきた。
「こんにちは。このチームを担当します、左古美瑛といいます。よろしくね」
案件を持ってきたのは、若い女性の社員さんだった。
「あたしはまだ今年入社したばかりで、他の方よりも仕事の進みが遅いので、皆さんの企画案を頼りにしています。勿論、私も全力でサポートしますので」
今年入社ということは、益盧先輩と同期だ。
「うちの課は、野菜や果物などの農産物を主に取り扱ってます。今回私が担当しているのが、このミカン農家さんなんです」
配られた資料は鮮やかなオレンジ色で彩られていた。見やすい。
社員さんからの説明をこんなに懇切丁寧に受けられるとは。分かりやすい。
「味の特徴は『酸味と甘味のバランスがちょうど良く、飽きの来ない味』とあるんですけど、正直食べてみないと判りませんよね? ということで、昨日仕入れてきました」
と、今度は実物の蜜柑が配られ、試食を進められた。インターンを仕事の一環と捉えていいのなら、「え、いいの?」とすら思えてしまう。大学の講義より緩い気がする。
けれど、俺等は真剣に案件と向き合っている。穏やかな時間の流れを感じられる働き方こそ、最高の労働の在り方だと思った。
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