ぼく負けないよ

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「僕負けないよ。」 ゆうくんは そう言い放った。 お母さんは 負けじと答える。 「そんなのやってみないと、  わからないからね。  途中で投げ出さないでよ?」 「わかってる!」 ゆうくんとお母さんは 親子で トレカで 遊ぶのが日課だった。 そして、なかなかゆうくんは お母さんに勝つことができない。 でも決まって、 最初は負けないよと言う。 強がってみたいだけだ。 カードの運び方で、流れ方で勝ち負けが 変わる。 「あー、  好きだったモンスターだったのに  技も出さずに負けちゃったぁ。」 そう言って泣き叫び、カードゲームが 中断される。 まだ勝負は決まっていない。 「わかった。  んじゃ、戻して。  やり直ししよう。」 お母さんは  たまに接待ゲームを してくれる。 接待ゲームとは、相手に有利になるよう ルールを多少無視してするゲームすることだ。 「今回だけね。  ルールがぐちゃぐちゃになるから。」 倒れて泣いていたゆうくんは、 さっと起き上がって、気持ちを切りかえた。 「今回だけ。  ルールは分かってるから!  絶対。  お願いします。」 ぐずぐず泣きながら、手札カードを持ち直す。 そうしながらも、結局はお母さんの持つ モンスターカードに負けてしまう。 また泣いて駄々をこねる。 「今回だけって言ったら  ゆうくんの負けね。  残念でした。」 「わーーん。負けたー。  強いモンスターカードたくさん  持ってたのに!!  お母さんずるい!」 「強ければいいって問題じゃないって、  必要なカードが来なければ  攻撃できないんだから。  ゆうが弱いカード持ってねって  指示出すから、お母さん、  そのまま流れるようにやって  勝ったんだよ?  強さも少しだけ吟味するけど、  バランスよく持っておかないとゆうみたいに  負けるんだよ?  まだまだだな、ゆうは。」  涙を拭って、カードを急いで  まとめた。 「いいもん、いいもん。  カード選び直すから。  次は負けないもん。」  手早く、好きなカードを選んで、  持ってるカードを交換した。  トントントンと揃えると 「お母さん、もう1回勝負するよ!  次は勝てるから、僕負けないよ!!」 「えー、今から  ご飯作りしようと思ったのに…。」 「いいから、もう1回!」 「それって、勝つまでやらせる気?」 「当たり前でしょ!!  ほら、座って、ほら!!」 ゆうくんは、座布団を指をさして、 指示する。 お母さんは渋々、座布団の上に座って カードを整えた。 トレカゲームはしばらく続きそうだった。 ゆうくんはいつ勝てることやら…。
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