1:明けない夕暮れの中で出会った運命

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1:明けない夕暮れの中で出会った運命

永遠(とわ)に明けることが無いこの夕暮れに、どれほど身を()だねてきたのかもう忘れてしまった。独りで長く生き続けると寂しい感情が、心の中に芽生えてくる。 狐月 雅(こづきみやび)はそんな気持ちを抱えながら、儚世(もうよ)に存在する海の向こう側を浜辺に座り眺めていた。 儚世の空に存在する"上界"で見てきた海と違うところは、向こう側が光に包まれて輝いており何も見えない。 そして角笠(つのがさ)を被り和服を着た、あやかしが木の小舟を緩りと()いで、"上界"から来ている人間を今日も向こう側へ運んでいる。  ――向こう側に行けばここより、あやかしが多いし寂しさが和らぐか? 一瞬そう思ったが向こう側は、儚世より治安が悪かったのを思い出して考えを止めた。 今日の稼ぎ分の討伐(とうばつ)が終わり、浜辺で休憩も取ったので雅は帰ろうと、立ち上がり後ろを振り向いた時であった。 「なんだあれ?」 朱と金に染まっている黄昏(たそがれ)の空を見上げると、思わず言葉を発した。 水面(みなも)のように空が揺らぎ波紋を浮かばせている。その中から人間の少女と思われる者が、ゆっくりと堕ちてきている。  「(行ってみるか)」 自宅に戻っても特にやることが無く、暇であった雅は興味本位で様子を見に行くことにした。
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