1:明けない夕暮れの中で出会った運命

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 ◆◇◆◇  「――ん」 頬にあたる冷んやりとした感触で、少女は目を覚ます。 倒れている体を起こすため、両手を地面につき腕に力を入れた。 力が入った両手の中で、軽く石がぶつかる音が聞こえてくる。下を見れば砂利(じゃり)だらけで体が少し起こしにくい。  「(ここはどこかしら?)」 立ち上がった少女は服に付いた汚れを、手で払うと周りを見渡す。 和を基調とした質素な(たたず)まいの草葺(くさぶき)屋根の家や、(かわら)屋根の家、中には西洋の文化を取り入れたばかりの館まで周辺に立ち並んでいた。 目を覚ます前と同じ世界だと思ったが、違う点があった……。  「おマエ、人間カ?ウマソウダナ」 少女の近くに何かがいた。 見たことの無い人の形をした化け物が、使い慣れていなさそうな日本語で、少女に話しかけ腕を力強く掴みあげる。 思わず「ひッ……!」と小さな悲鳴を上げた。 この化け物に喰われるの?でも、あのような生活を送り続けるぐらいなら、価値の無い私はここで全て終わっても、悪くないかもしれない……早く楽になりたい。 少女は自ら過去にあった出来事を回想すると、そう思った。 血が氷のように冷たく、体が凍るほどの恐怖に身を包まれていたが、諦めの感情が(まさ)ったので暴れずに大人しくなる。 その時であった。
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