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少女が化け物に掴まれていた腕は、勢いよく他の誰かの手で下ろされて、少女の隣には頭に狐耳と思われる物を生やした和装の人(?)がおり、化け物へ話しかける。
「お前は、また人間を喰うつもりか?あやかしが人間を喰うのは禁忌だろうが」
狐耳を生やした男……であろう人物の顔を下から少女は見上げる。
首の後ろで緩く結われた短髪は、絹のように色素が薄く美しい白で、細身な体格であり儚い美しさを感じられ、男か女か判断が一瞬つかなくなるほどの容姿端麗。
だが、冷酷そうな顔付きで垂れ目がちな片方の瞳には、黒い眼帯を付けており怖さも感じられた。
「ナ、ナんダぁ?雅か……ヘヘッ、おマエもこの娘を喰いたいのか?人間の魂は美味イゾ」
化け物はあやかしで、少女の隣にいるこの男は雅という名らしい。
「そうではない、儚世にいるあやかしが人間を喰うのは禁忌だと言っている。そんなに喰いたきゃ海の向こう側にでも行って、喰ってこい。それともお前はまた痛い目にあいたいのか?」
雅は少女の腕を掴んでいる、あやかしの手を上からメリメリと音を立たせながら、圧力を掛けて握り返している。
「ケッ。おメェを怒らせたら、ひとたまりもネェから、オデ。帰ル」
少女の腕を離したあやかしは、雅の手を振りほどくと慌てて、転びそうになりながら遠くへと走り去って行った。
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