1:明けない夕暮れの中で出会った運命

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初めて互いに顔をしっかりと見合う。  「アンタは……ッ。何で生贄が……また、他のあやかしに狙われるぞ。喰われたいのか?」 少女の顔を見た時、雅は悲しみや切なさ、困惑を感じさせるような表情が一瞬と浮かんだが、すぐに冷静になる様子が伺えた。  「喰われたくないです……もう怖い思いをしたくないッ……それにここはどこ?何も分からないの……あやかしって何?……お願い。頼れそうな人が貴方しかいないの……助けて」 このままでは行く宛ても無くなってしまう。 放置されれば、あやかしに消されるか喰われてしまい、とても独りでは生きて行くなんて今の状態だと無理と感じた少女は、恐怖で体を小刻みに震えさせながら、雅の袖を引っ張り彼が去らないように引き止めた。  ◆◇◆◇ 最初は興味本位で様子を見に来ただけ。 着いてみれば人間の魂を喰った前科がある、あやかしが小柄な少女と思われる者の腕を掴んで、喰らいつこうとしていた。 正直、この儚世で人間の魂を喰うのは禁忌であると言われているだけなので、止める気は無かったが、しばらく眺めていても少女は抵抗する様子も無い。 本来であれば別に少女が喰われようが、どうでも良かったが、抵抗しない姿を見て妙にイライラしたため、間へ介入してしまった。
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