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何故この少女は、先ほどから謙虚……いや、自分を卑下しているような雰囲気や態度をするのだろうか。
本当に調子が狂わされそうだ、と雅は思った。
「べ、別に礼を言われることなんて、アンタにしていないし。とりあえず僕の家に来るならついて来な」
少女は頭を上げてから「はい」と答える。
先ほどから暗かった表情が少しだけ、明るさと笑みを含んだ表情へ変わった気がした、と雅は感じた。
◆◇◆◇
左右に赤い灯篭がある、無限に続きそうな石の階段を上る。足が鉛のように重くなり始めて疲れてきた。
雅からこの階段の上に家があると、先ほど聞いたので少女は根を上げずに、黙って自らの足に鞭打つかのように歩き続けて、雅の後を追う。
雅は少女が着いてきているか心配なのか、チラチラと少女の様子を伺う。
距離がだいぶ開いているのに見兼ねたのか、少女の元まで階段を下りて声をかけた。
「かなり家まで離れていたから、途中で根でも上げてくれれば休んだのに」
「最初に怖い思いを……したくなく、根を上げて雅さんに……助けてもらったので……これ以上……ご迷惑をおかけできません」
「でも、息が上がってるじゃん……はぁ~……」
「あ。ご、ごめんなさい」
雅のため息を聞いて、迷惑をかけてしまったかもしれないと思った少女は、息を切らせながら慌てて謝った。
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