青い話

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昔々あるところに、一人の妖精がいました。 今もいるその妖精は仲間を増やし、世界のいたるとことに潜んでいます。 青い水を作りましょう。 まず、青い水とは何なのでしょうか。 それは「青い」水です。それはそれは「青い」水です。毒はありません。味も匂いもありません。 ただ青いだけの水。それが「青い水」なのです。 青い水は自然に湧いて出るものではありません。だからこそあなたに作ってもらいたいのです。 青い水を造るための材料は二つ。 まずは水。泥水でも川の水でも、何でもいいです。誰かの血でもいいです。何かの木の実を搾ったジュースでもいいです。とにかく液体であれば何でもいいです。 ああ、ただ生きているモノとかはダメですよ? 水のようなドラゴンとか何処かの世界にはいたりしますが、それは青い水にはなりません。命を持たない水こそ、青い水となるのです。 そしてもうひとつ。これには名前がありません。ですがこれこそ重要なのです。 青い水となるのに最も重要なもの。それは、それは、えっと、なんと言いましょう。強いて言えば、妖精の落書きでしょうか。 最初から妖精妖精と言ってはいますが、青い宝石キャンディを作るには青い水が必要。青い水を作るにはその妖精が書いた落書きが必要。つまり宝石キャンディ自体を妖精が作っているわけではないのです。 ですがその落書きがなければ水は青くなりません。彼らでなければいけないのです。 どうか彼らを探してください。 そして見つけるのです。彼らの書いた読めない落書きを。 その妖精は何処にいるかわかりません。しかも困ったことに見えない。 それでもどうにかして彼らの落書きが、足取りが欲しい。 落書きを手に入れる方法を教えましょう。ですが実行するのはあなたです。 まず好きな本を用意しなさい。手帳でも構いません。そこに白紙の紙を挟むのです。 外へ続く窓に一番近い机の上に閉じたそれを置きなさい。そしてカーテンを閉めるのです。窓の鍵はかけずにおきなさい。恥ずかしがりやの彼らが入ってこられるように。 そして陽が沈み陰が満ち、再び陽が昇る までその部屋には入ってはいけません。扉の鍵をかけて部屋を閉じるのです。入り口は外からしか入れない限られた窓のみ。 あなたは一夜を眠りの中で待つのです。目覚めて彼らを探してはいけません。だって彼らは恥ずかしがりやなのですから。 朝が来たら部屋へ入ってもよろしい。ノックの必要はありません。本に挟んだ紙には妖精の落書きが残っているでしょう。 それは絵や図ではなく、読めない文字の羅列です。吸血鬼である私にも読めません。どんな魔法使いにだって読める人はいないことでしょう。 「落書き」は彼らにしか理解のできない「メッセージ」なのです。 さあ、それを手にお取りなさい。 青い水を作りましょう。 青い水を完成させるのは至極簡単なことなのです。 水と、妖精の書いた落書き。この二つさえあればどんな頭のイカれた大バカ者でもトクベツな青い水が作れてしまいます。 ほら、水の上に落書きを浮かべるだけです。 簡単でしょう? そうすればあっという間に青いインクで書かれた落書きは水の底へ落ちていってしまうのです。 落書きが落ちるまでは混ぜてはいけません。ただ、水の上に浮かべるだけでいいのです。 不思議でしょう? そのインクは彼らだけの魔法なのです。 彼らだけの落書きを彼らだけのインクで描く。ふふ、素敵なことではありませんか。 ただし、一枚の落書きに対して染まる水はコップ一杯程度。だから白い紙もそんなに大きな物を用意してはいけません。妖精はお喋りではないのです。 ではとっととお家へ帰って用意なさい。 いいですか? 何度も言いますが妖精は恥ずかしがりやです。一晩に近くの場所で落書きを手に入れることはできません。一家に一枚。その程度だと思いなさいな。 それではここに昨日私が置いておいた本があります。間にはもちろん真っ白だった紙。 信じていないようなのでお見せしましょう。 ほらどうです? このなんとも言えない文字のような線のような数字、いえこの辺りは記号? あ、読めなくもな、はいやっぱり読めませんね。全く読めません。多分私の予想では日記のようなものではないかと、いえいえ読めませんからその辺りは全て想像です。 ですがちゃんと青色インクで落書きがされているでしょう。これが青い水を作るための大事な材料となるのです。
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