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 朝焼けのすがすがしい空気の中、木村遥(きむら はるか)はいつもの境内に来ていた。 「こんこん様。今日も一日お願いいたします」  俺は毎朝ジョギングをするのが日課だ。ちょうど折り返し地点に稲荷神社があるのを見つけてからは毎日参拝を続けている。こじんまりした神社だが鳥居をくぐると神聖な空気が漂う。  ここの神社には狐の石像が三体ある。一匹は口に鍵をくわえており、もう一匹は宝玉を咥えている。最後の一匹は他の二匹より少し大きめで巻物を咥えていた。  いづれも切れ長の瞳でしっかりと筋肉の付いた足にふさふさとした尻尾の持ち主だ。 「おはようございます。やっぱり皆カッコいいなあ」  俺は石造一匹づつに声をかけ、その風貌に見惚れた。何故だか俺が声をかけるとほんの少しお狐様の顔が優しくなるように思える。まあ完全なる思い込みだが。 「お〜い! はるか! やっぱりここだったか」  境内の階段を登りながら声をかけてきたのは神宮寺 司(じんぐうじ つかさ)だ。俺のジョギング仲間だ。この近所に住んでいるらしい大学三年生。俺と同じ学年だ。最近よく見かけるようになった。人懐っこい性格のようで初対面からいろいろと話しかけられ、いつの間にか友達になっていた。 「おはよう司、今日もかっこいいじゃん」 「なあに言ってんだよ。ばあかっ」  言われた司は目じりがほんのり赤い。照れてるんだな。司は俺よりも少しばかり背が高い。程よくついた筋肉にすらりと伸びた足。栗色の髪に切れ長の目の美形だ。  ちくしょーっ。俺もカッコよく産まれたかったぜ! 「なあ。この後さ、朝バーガー食べに行かないか?」  司が走りながら声をかけてきた。 「何言ってんだよ。お前ダイエットのために走ってるって言ってたじゃねえか」 「それはそれ。これはこれ。今日から新作バーガーが出るんだって。一緒にたべようぜ」 「しょうがねえなあ」  なんて言いながら、俺も新作バーガーには興味を持っていた。本当は誘ってもらえて嬉しかったのだ。司とは気が合うし、何より一緒に居ると楽しい。もっといろいろと司の事が知りたいと思っている。  バーガー屋に着くと朝だというのに満員だった。やっぱり皆考えることは一緒だ。ここのバーガーは肉厚でジューシーでかぶりつくと肉汁がジュワっとでてくる。それに特製ソースが絡み合って若者の胃袋を掴むのだ。新作は夏野菜がたっぷり入ったバーガーらしい。 「イートインする場所がないね。どうする?」 「お持ち帰りにする?」 「そうだね。ここから俺んち近いんだ。寄ってく?」 「え? いいの?」 「もちろん。時間あるならうちに来いよ」  司がほころぶように笑った。ああ……笑うと可愛いなあ。でも誰かに似てる?
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