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「え? なんか言ったか?」
「あ、いや。別に。はるかは凄いなぁ。まだ大学生なのに」
「俺も花火を作りたいんだよ。こうみえて高校生の頃からじいちゃんの元で習い始めたからもう三~四年は修行つんでるんだよ」
はるかが見せた画帖には、デザイン画だけでなく、打ち上げの角度の計算式なども載っていた。
「すごっ。計算とかもするんだ?」
「うん。どの方向に飛ぶかぐらいは簡単にするよ。後はどの順番であげたら良いとかさ。組み合わせも考えるんだ」
「はるかって本当はすっごく頭良いんだね」
「なっ。なんだよぉ。ってか、今まで俺の事どう思ってたんだよ〜? ただのジョギング馬鹿ぐらいにしか思ってなかったんだな?」
「あははは。いやいや、そんな意味じゃないよ」
「うそつけ〜っ。えいっ」
俺は司の口の中にポテトを詰め込んでやった。まぁ、要するに照れ隠しだ。自分の作品を褒めてもらうほど嬉しいことはない。
「ふふ。お返しだ~」と今度は司が俺の口の中にポテトを突っ込んできた。
あれ? なんだこれ? なんかイチャついてるのか俺達? 急に恥ずかしくなってうつむくと司が心配そうに覗きこむ。
「どうしたの?」
「い、いや。のどに詰まったんだよ」
俺はわざとケホケホと言いながらドリンクをがぶ飲みした。
「悪い。詰っこみすぎたかな? ははは」
楽しそうに笑う司の流し目がやけに色っぽく感じる。切れ長の目の端が朱に染まっている。ふと横顔が稲荷神社のお狐様と重なる。あぁそうか。誰かに似てると思ってたらお狐様の石像に似てるんだ。普段は清潔感があるイケメンなのに、笑うと可愛いくて愛嬌がある。
わわわっ。なんだ俺? めっちゃドキドキしてきた。その上、一口頂戴なんて言いながら司が俺のバーガーに齧り付いてきた。チーズ入りとチーズなしで食べ比べようぜと言い出したのは俺だけど。口の端についたソースを舌でペロリと舐め上げる仕草は誘ってるようで目に毒だった。
俺って男もイケたのか? いや。司……だからかな。
「さっきから黙りこくってどうしたのさ?」
「そ、そりゃあ。じっくり味わってるからだよ」
へ〜えと言いながら、司がまた俺の顔を覗き込んでくる。近いっ。距離が近すぎ。
「そ、そうだ。うちの仕事場覗いて行かないか?」
「え? 花火作ってるとこ? 見せてくれるの?」
「うん。まだ時間ある? 見においでよ」
「行く! 今日の授業は午後からなんだ」
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