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「うわあ。火薬のにおいがする」
司が感嘆の声を出すと中から声がした。
「あれ? 坊ちゃん、お友達ですかい?」
工房にはじいちゃんの弟子が数人いる。中には俺が小さい頃からの職人もいるのでどうしても坊ちゃんと呼ばれてしまう。普段は聞きなれているが、司はどう思っただろうか?
「なんだ遥、もう来たのかい? お前まだ学生なんだから、たまには遊んできてもいいんだぜ」
「じいちゃん、そんな心にもない事言うのはやめてくれ。どうせその後めいっぱいしごくつもりだったんだろ?」
「ちっ。バレてたか? で? 見学かい?」
「はい。ちょっと拝見させてもらってもいいですか?」
司がきょろきょろと周りを見渡しながらもじもじしてる。なんだそれ。普段のイケメンからは考えられねえくらい可愛いじゃねえか。
「おう! いいぜ。若いもんがうちの仕事に興味持ってくれるってのは嬉しいね」
工房では大きく分けて二部屋にわかれている。星と呼ばれる火薬の玉を作る作業場とその玉を詰める作業場。星づくりは難しい火薬の配合や色合いを決める要なので企業秘密っぽい場所であまり人にはみせたくない。そう思って今日は玉詰めの作業場に連れてきた。
「坊ちゃんは玉詰めが上手いんっすよ」
「へー? 俺初めて見ました」
半球型の容器に星を詰めていく。一見簡単そうだが、これが意外と難しい。ここで色の組み合わせや分量を間違えると見目が悪くなったり、形が悪い花火となる。
「センスが必要な仕事なんじゃ。それにな自分が作った作品が夜空に上がった時の興奮は半端ないんじゃよ」
「へい。親父さんが作る伝説の色シリーズは凄いっすからね~」
「チッチッチ。せっかく若い見学者が来てくれてるんだ。正式名称で言ってくれや」
「じいちゃん、まだ諦めてなかったのかよ」
「あたぼうよ!俺っちの作った最高傑作だ。それにあった名前が必要だってんだ」
あちゃ〜。じいちゃんのべらんめえ調がはじまった。血圧上がってきたかな。
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