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7
そんなこんなでとうとう花火大会の前日がやってきた。
「……はるか、明日は雨がふる。台風になるかもしれない」
司が青い顔をして言い募る。何冗談言い出すんだ。
「へ? 何言ってんだよ。こんなに晴れてるじゃねえか」
「でも、ふるんだよ。延期にできないのか?」
「無理だよ。運営は市町村がやってる。俺一人じゃ決められないし、多分ギリギリまで中止には出来ないはずだ。なんでそんなこと言うんだよ」
スマホの天気予報を確認するとさっきまで晴れだったのが雨雲のマークにかわっていた。熱帯低気圧から台風が発生したそうだ。明日の夕方から大雨になると出ていた。
「司って気象予報士の資格とかもってるのか?」
「まぁ、そんなようなもんだ」
翌朝、すでに曇り空だった。俺は逸る気持ちを抑えてジョギングに出た。一週間ぶりに来た稲荷神社。俺はおいなりさんをお供えし、お狐様の元にひざまづいた。
「お狐様。こんこん様。じいちゃんが入院した病院から花火が見えるんだ。じいちゃんさ、頑固だから花火を見てからでないと手術しないって言い張っててさ……俺なんとか成功させたいんだ。どうかどうかお願いします」
「そうか『それがお前の願いなのか?』……」
「うん。それが俺の願いだよって? 司? 来てたのか」
「はるか。お前の願いはかなえられるよ。きっと」
「そうだといいな」
そこからは花火台のセッティングに大わらわで司の姿が見えないのに気づかなかった。俺達の願いが叶ったのか、それともお狐様が助けてくれたのか台風は跡形もなく突如消えたらしい。夜空には次々と花火が上がっていた。
最後に上がった大輪の菊の花のようなじいちゃん渾身の花火。ウルトラスーパーなんちゃらは虹色に綺麗に色を変え時間差で花を咲かせた。河川敷にいる皆は口々に歓声をあげる。じいちゃん聞こえてる? 皆喜んでるぜ。
「司、どこに行ったんだろ? どこかで見ていてくれると嬉しいな」
その後撤収作業を終え、帰宅すると真夜中になっていた。
「明日は早起きしてまたジョギングしよう。司にもお礼を言わなくちゃ」
俺はうとうとと眠りについた。
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