第14話 心が折れかけたので運営にあたろうとして

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第14話 心が折れかけたので運営にあたろうとして

「ダメだ。火力が足りん!」  俺たちは森の入り口で輪になっていた。  まさか初級のステージ1で負けるとは思わなかった。 「攻撃役(アタッカー)のあたしが全然ダメだったから……せっかく強化してもらったのに……」  リーゼは初めての敗北にかなりショックを受けているようだった。リーゼは打たれ弱いのだ。 「いや、リーゼは悪くない。あの魔人木は風属性だ。リーゼの水属性とはすこぶる相性が悪い。俺の判断ミスだ」  今回はリーゼを始めとしてRの連中もできる限り強化を施した。油断したつもりはなかったが甘かった。  俺はいつも課金の力に頼りすぎていたんだ。  初級くらいなら属性や相性を考えず適当に強いキャラを突っ込むだけでクリアできていた。  これが無課金初心者の気持ちなのか。  リセマラや課金で楽をしていたから味わったことがなかったがこんなにきついのか。  しかし、それにしてもこんなの火属性のキャラを引けなかった俺みたいなやつがどうやってクリアすりゃいいっていうんだ。  ガチャなんて運なんだし、火属性がいない場合だってあるだろう。  それともリセマラ必須とでも言う気だろうか。SRキリアを持っていればクリアできたかもしれないが、リセマラ前提のバランス調整なんて最悪だ。 「アルボ。問い合わせしたい」 「え? 今ですか? わ、わかりました。……内容をどうぞ!」  手紙を取り出してアルボが問い合わせの準備をしてこちらを見る。  俺は興奮状態のまま 「イベントの難易度について。ちゃんとテストプレイしてんのか! 初級からいきなり課金前提の難易度で初心者がクリアできるわけ無いだろ! 初心者や無課金者でもイベントの初級くらいクリアできるような難易度にしないと誰も続けてくれないぞ!」  と一息で言い放った。すると、アルボが手紙を書く手を止めた。  そして、恐る恐るといった目で俺の方を見た。 「……あの、ひとついいでしょうか」  申し訳無さそうにアルボはぽつりぽつりと話しだした。 「ボクは運営ではありません。ただのゲームの中の案内人にすぎません。だからこんな事を言うのはおかしいかもしれません」 「ボクはこれまで初心者の方や無課金の方をたくさん見てきました。実際にあなたの言う通りすぐにやめてしまう方もたくさんいました」  アルボは言いづらそうに音なく口を動かした後。 「ですが、ちゃんと続けていく人もいました。無課金でも続けてくれる人はいたんです! あなたはまだブルファンの本当の面白さに気づいていないだけかもしれません。だって、ブルファンは……ブルファンは面白いゲームなんです!」  アルボは泣きそうな顔でいった。  アルボの言っていることはわかる。俺だってブルファンは好きだし、実際サービス開始から今まで続けてきているんだから。 「だけどなアルボ。今どきのやつってのはゲームを攻略するためにコツコツ努力なんてやらないんだよ。だからそれじゃダメなんだ」 「それは……そうかもしれませんが……」 「だけど、もう一度やってみるよ」 「え……」 「俺はブルファン信者だからな。無課金でもクリアできるってのならやらないわけにはいかねーわ!」 「……はい!」 「作戦を練り直すぞ!」 「はいっ!」
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