第10話 ようやくガチャが引けるようになったので

1/1
前へ
/24ページ
次へ

第10話 ようやくガチャが引けるようになったので

「ガチャを引くぞ」  第1話のクエストをすべてクリアした。  森に巣食うナベダヌキを討伐したことで、最初の拠点であるアールボール村を救い、ゲーム的に『第1章第1話を攻略せよ』というミッションをクリアした報酬もゲットした。  NPCであり妖精のアルボから、村を救ったお礼(という建前)を受け取り、俺の手持ちはちょうど3000(ジェル)になったのだった。  アルボはくるりと跳ねるように俺の周りを飛んで回って。 「ガチャ! いいですね!」  NPCらしい仕事ができるのが嬉しいみたいだ。 「この先もリーゼさんお一人で攻略するというのはあまりに無茶ですもんね」  その通りなのだ。  前回の戦いで戦闘を目の当たりにして学んだ。  戦うのはリアルに目の前に存在するキャラクター。  敵の攻撃を受ければゲームの時のようにキャラがノックバックしてHPゲージが減るだけでは済まない。  キャラは攻撃を受ければ、痛みを感じるし悲鳴も上げるし、服だって汚れるし破けるし、傷もできるし血だって出る。  まあ傷はすぐに治るようだったけど、痛みはそうはいかないようだった。  だから俺は――  ただクリアするだけじゃなく、できるだけダメージを受けずにクリアしたいのだ。  もう目の前で体の小さなリーゼが吹っ飛ばされるようなことは二度と起こしたくない。  そのためには戦力の補強が必要だ。  一番手っ取り早いのが手持ちキャラを増やす『召喚』。つまりガチャ。  ソシャゲにおいてガチャは戦力強化の最短経路。  強いキャラを手に入れるにはガチャ。  ゲームを楽しく遊びたいならガチャ。  ガチャガチャガチャ。  日本のソシャゲの悲しい現実。  『召喚の儀』と呼ばれるこのゲームのガチャは1回300(ジェル)。3000(ジェル)あれば10回召喚を行える。  今の俺には10人も仲間を増やすチャンスが有るということだ。  まあ、キャラが被ることもある。よくあるんだけれどね。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加