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第10.4話 ソシャゲの儚さを語り
「いいか、アルボ。ソシャゲの平均寿命は約1年と言われているんだ」
「い、一年!? そんなに短いんですか!?」
「そうなんだよ。3年続くのはたったの20%。さらに5年以上続くのは全体の5%以下。逆を言えば95%以上のソシャゲが5年以内に終了しているらしい」
「ええっ! そんな少ないんですか!?」
「それだけじゃない。そもそも生まれてこないソシャゲのほうが多いんだ」
「生まれてこない、とは?」
「ソシャゲはリリースするまでも大変なんだよ。企画して、資金を集めて、制作して、リリースしてって。サービス開始までたどり着けなかったソシャゲのほうが圧倒的に多い。むしろ、サービス開始できただけでもすごいことなんだ」
「そんな過酷な世界だったんですね……」
この世界で生まれて、この世界が全てのアルボたちゲームの住人にとって、俺達の世界の時間がどのように感じられるのかはわからないけれど。
ブルファンもリリースから3年が過ぎたところ。
すでに平均を超えているとはいえまだまだ安心できるわけじゃない。
少なくともアルボにはこのゲームが置かれている状況も含めて伝わったのだろう。
「だから『たったの数ヶ月』なんかじゃないんだよ。ソシャゲの旬は短い。気を抜いていたらあっという間に飽きられてしまうんだ」
「怖すぎますね」
「ソシャゲなんて毎日のように新しいものがリリースされているからな。少しでもつまらないと感じたユーザーはすぐに次のゲームに移ってしまう。そして一度やめてしまったゲームに戻ってくることはほとんど、ない」
「どうしてです?」
「一番は技術の進歩だな。新しいゲームは新しい技術が使われていることが多い。特にグラフィックとか最近のやつはめっちゃきれいになってるし」
「ぐらふぃっく?」
そこは流石に伝わらないか。
「まあ、誰でも新しいものに魅かれるってことだよ。アルボだって新しいお店が開いてたらちょっと入ってみようかなってなるだろ?」
「なりますね……」
「そういうこと」
アルボは腕を組んで悩み込んでしまった。
その姿も可愛い。スマホがあれば写真に取っておきたいくらいだ。
「これもなしで」
さらに一枚のチラシをアルボに返す。
「これは何がダメなんです?」
「このガチャでピックアップされているキャラは『対人戦向け』だからだよ」
「タイ人せん?」
「ああ、対人ってのはユーザー同士でバトルすることだ。ブルファンで言えば『スカイアリーナ』のことだよ」
「ああ! ビジター同士が戦う大会のことですね!」
「そうそう。あれはどんなに頑張っても新規は勝てないんだ。だから今の俺が対人用のキャラを引いても意味がない」
「どうして新規は勝てないんです?」
「そりゃあ、ゲーム始めたての新規が3年間毎日やってる古参プレイヤーにすぐに勝ててしまったら古参プレイヤーはみんなやる気をなくちゃうだろ」
「確かに……。あれ? でも新規プレイヤーを優遇するのが大切なのでは?」
アルボはやっぱりなかなかに賢い。
が、甘い。
「確かにやっかい古参よりも新規の方が重要――――だが、新規もいずれは古参になる!」
「――――!!」
雷に打たれたようなオーバーリアクションを取るアルボ。
動きが加わるとここまで可愛いとは。
ブルファンもグラフィックに力を入れるべきなんじゃないか?
「そういうこと。だからまあ新規はとりあえずクエスト中心に遊ぶ。古参プレイヤーは対人で遊ぶ。そういう棲み分けは大抵のゲームで行われているんだよ」
「なるほど~。そういうことだったんですね」
そして手元に残った数枚のチラシの中から、一つを選んでアルボに渡して。
「このガチャにする」
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