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第10.6話 闇の鎮魂歌ガチャを引くと決めて
「えーっと『暗闇より訪れし精霊たちの鎮魂歌』召喚ですね」
かっこよく意味ありげにしようとして逆にダサくなった挙げ句、全く意味がわからないタイトルのガチャ。
これもソシャゲにはよくあることだ。
毎度毎度ガチャやイベントのタイトルを考えるのはさぞ大変なことだろう。
しかもユーザーはガチャタイトルにそこまで関心がない。
一生懸命考えたところで報われないとなれば適当になるのは仕方のないことだ。
「キシタローさん、この召喚を選んだ理由を聞いてもいいですか?」
「いいよ。まず、新しいイベントに使える『イベント特効』がついていること。このガチャで新キャラを引けたら今開催されているイベントを有利に進めることができるんだよね」
「ああ、イベント特攻キャラを連れてクリアすると報酬が増えるんでしたね」
「そう。それと、今回のはタイトルから分かるように『闇属性』のキャラがピックアップされているからな。闇属性と光属性ってのは他の属性に比べて汎用性が高いんだ。初心者は迷ったら、まずは光属性か闇属性を狙うというのはソシャゲのセオリーの一つだよ」
「なるほど。そこまで考えて召喚選びをしないといけないんですね……もしボクだったらどれを引いたらいいか分からず、罠に引っ掻かちゃうと思います」
NPCのくせに罠とか言い出した。
いい感じに擦れてきた。
「今は攻略サイト……まあ情報屋みたいなもんな。そういうところでどのガチャを引けばいいかは教えてくれたりもするから、ユーザーが迷うことはあまりないんだ。まあ、その情報屋の情報が間違っていることも合ったりするんだけど」
「そうなんですね。とりあえず承知しました。では『暗闇より訪れし精霊たちの鎮魂歌』召喚の儀を行います!」
アルボはバッグから短めの杖を取り出して構えて、こちらを向いた。
「10連召喚でいいんですよね?」
「もちろん。SRが最低1体保証されているからな。そのために3000ジェル貯まるまで我慢してきたんだし」
「わかりました! では、いざ! 召喚の儀へー!」
アルボが杖をくるりと振ると、空間が歪み始めた。
ガチャのために転移が行われる。
「いってらっしゃーい」
とリーゼの眠そうな声が聞こえた。
リーゼはついてはついてこないのか、いや、ついてこれないのかもしれない。
空間の歪みが収まると、宇宙空間に浮かぶおなじみの『扉』が現れた。
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