第10.8話 金色の扉の向こうから現れたのは

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第10.8話 金色の扉の向こうから現れたのは

 金色に輝く扉。  SR以上確定演出。  ちなみに通常は木製の安っぽい扉。  とはいえ、10連ガチャはそもそも最低1体のSRが保証されているので金色の扉は熱くともなんともない。  これが虹色の扉だった場合はSSRのキャラが登場することが確定していたのだけどね。  もしくは、逆に10連ガチャなのに木の扉だったら、矛盾演出でSSR確定だったりする。  ソシャゲユーザーとギャンブラーはそういう細かい演出が大好きだ。 「いくぞ!」  扉をノックする。  扉がゆっくりと開き、中から光が差して大小10人分のシルエットが浮かび上がった。  一番右の一人目のシルエットが明らかになっていく。  ちょっとクセのある少年ボイスが響いた。  「お宝はどこかな? 宝探しならおいらに任せてよ」  一人目はRコバ。  Rはレアという意味だがソシャゲにおいてはレアでもなんでもない。  そもそも課金ガチャで登場するキャラはすべてR以上だし。  コバは小人族の少年で身長はリーゼよりもさらに2周りほど小さい。  人懐っこい笑顔と、緑色の肌と、アルボと同じく少し尖った耳先が特徴的なキャラだ。  俺の記憶によれば前衛物理職。  前衛だが特に守りが強いわけでもなくパーティに入れておくとわずかに獲得ゴールドが増えるのが特徴の――雑魚キャラだ。  ようはハズレ。  安っぽい弥生時代の貫頭衣みたいな服を着せられてるのがその証拠だ。  まあ一人目だしな。  次だ。  先程と同じくらいの小さなシルエットが――  「お宝はどこかな? 宝探しならおいらに任せてよ」  二人目もRコバだった。   「おい! いきなり被ったぞ!」 「まあRは出現確率高いですし」  こともなげに言うアルボ。  確かにRは数も少ないので被りやすいが、最初から被るとはなんとも幸先が悪い。  といってもこんなことはよくあることだ。  まだ全然慌てる時間じゃない。  次のシルエットの光が解ける。  「お宝はどこかな? 宝探しなら――」 「おい! どうなってんだよ! なんかしただろ!」 「うわぁ……。いますよね、そうやってガチャの結果が悪いと運営に文句を言う人。ボクは運営じゃありませんし、引いたのはキシタロさんですから」  俺の名前はキシタローだ。  こうしくんみたいな呼び方しやがって。声がかわいいし響きもいいから許すけども。 「ま、まあいい。まだ7人も残ってるからな。だけど次もコバだったらクソゲー認定してやるからな」 「ええ……」  次に聞こえてきたのは可憐な花のように可愛らしい声だった。
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