第10.9話 個性豊かなハズレキャラたちと

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第10.9話 個性豊かなハズレキャラたちと

 「あたしはパゼラ。お花をひとついかが?」  四人目はRパゼラ。  三角巾をつけて花かごを持ったお姉さん。  とりあえずデカくしときゃいいと乱暴にデザインされた胸部だけが印象的なキャラ。  見た目はコバほどではないにしろ所詮はRキャラなので素朴。  レア度で衣装の装飾の派手さは決まるのだ。  何を言ったところでRでは大した戦力にはならない。  次だ。  「お宝は――」 「うおおおおおい!!!」  アルボに掴みかかり、ほっぺたを両手で掴んだ。アルボの両頬はマシュマロのようにすべすべで柔らかった。 「な、なんでふか」 「どうなってんだよ! 5回中4体もRコバだぞ!?」 「引き弱ですね……いえ、確率的にはむしろ引き強?」 「嬉しくねえよ!」  アルボを解放してやった。  パタパタと羽を羽ばたかせながら、どこか嬉しそうに。 「でもまあよくあることですよ」 「くそ、よりによって最初の10連でこんな目に合うとは……」  こんなだからガチャシステムは悪い文明なんだ!    「まだ半分ですよ! まだチャンスは5回も残ってますし、諦めるのは早いですよ!」 「そうだけどさ……。次こそ頼むぞ。一体でいいからSSRこい!」 「がんばれー」  他人事だと思って暢気なアルボの声を打ち消すように白い光が解けて元気のいい野太い声が響いた。  「ヘイヘイヘイ! 元気だしていこうぜ!」  六人目。  またもやR。  こいつはRゾルムという口が悪い脳筋キャラだ。  物理の前衛で正真正銘のハズレキャラだ。 「こいつってこんなでかかったのか」  実際に目の当たりにするとバカでかい。  2メートルはゆうに超える身長に、パースが狂ったように盛られた筋肉につややかなリーゼント。  衣装は黒いブーメランパンツ一枚のみという風貌で、見ただけでネタキャラとわかる。  引いてから一度も使ってない。  特に使えるわけでもないのに、可愛い女の子が多いゲームなのにわざわざこんなネタキャラを使う理由などない。  あまりに使わないし、引いてもすぐにスキップするので記憶に残っていなかった。 「さ、次いきましょう!」  アルボもなかったことにするかのように次のガチャ結果へと促してきた。  そして光が解け……。  「ホイホイホイ! 俺に任せときな!」  七人目はRゾラム。  見た目がさっきのゾルムとそっくりなのは二人が双子だからだ。  脳筋男キャラの双子とかどこ需要だよ、と突っ込んだのは懐かしい記憶だ。  デザインはパンツの色がゾルムが黒、ゾラムは赤というだけであとはほぼ同じ。  キャラの数が足りずに適当にコピペしたんじゃないかというのが通説だ。  見た目だけでなくCVも同じ、性能も殆ど変わらないというユーザーへの嫌がらせでしかないキャラである。 「ゾム兄弟が揃いましたね……」 「……そろった特典とかないのか」 「あるわけないじゃないですか。……ご存知でしょう?」 「なあ! もう七人目だぞ!?」 「は、はい……」 「本当に何もしてないんだろうな!?」 「も、もちろんですよ! ボクにそんな力はありません! あったらむしろいいキャラを引いてもらいますよ! ですからこれは純粋に……」  アルボが言いよどむ。 「純粋に俺の引きが弱いだけってことか」 「……はい」  俺は大きく深呼吸する。 「ふう。いや、すまんアルボ。横にお前がいたもんでつい愚痴りたくなっちまった。ガチャ結果が悪かったからって発狂するのは最低だったな」  俺はアルボに頭を下げた。  アルボは慌てて、 「い、いえ! 全然気にしてませんから! あと3体です! まだチャンスはありますよ!」   と励ましてくれた。  こいつはほんとにいいやつだな。  「お宝はどこかな!」  俺は無言で、顔を青くしているアルボの頬を掴むとその柔らかいほっぺを気の済むまで揉みしだいてやった。 「ふう。なんとか落ち着いた」 「そ、それはよかったです」  すこし赤くなったほっぺをさすりながら涙目のアルボ。 「残り2体か。次でせめてSR以上でいいから引きたい。引きたいよアルボ!」  俺は涙目どころではなく、ガチ泣きでアルボに詰め寄った。 「そっ、そうですよね! 引きたいですよね! つっ、次こそ引けますよ! 引けてくださいっ!」  祈るような気持ちで9体目のシルエットを見つめた。  無情に輝くR確定の白い光。  そして響く野太い声。  「ヘイヘイヘイ! 元気だしていこうぜ!」  陽気な声が元気よく響きわたった。  元気なんか出るか。  さすがのアルボも青筋を浮かべて俺の様子を上目遣いで申し訳無さそうに見上げるだけだった。 「次で終わりか。まさか最低保証とはな」 「つ、次はSR以上確定ですし、一応SSRが出ることもありますから」  とアルボは励ましてくれるものの、彼もよく知っているのだろう、最低保証枠でSSRが出ることは殆どない。  まあ、別に確率は9回目までと変わらないのだけど、期待が大きくなりやすい分最後は出ないという印象が残りやすいのだ。 「せめてイベント特効がある新キャラで頼む!」 「そ、そうですね。SR以上の新キャラはピックアップされていますし、きっと出ますよ!」  そうなのだ。  イベントガチャでイベント特効キャラを引かないとイベントを有利に進めることができないのだ。  この最後のSR枠でなんとしても新キャラを! せめて使えるキャラを引く! 「いくぞ!!!!」  SR確定の金色の光に浮かぶ小柄なシルエット。  徐々に明らかになる姿から可愛い声が響いた。 「あたしはリーゼ。ふんっ! なんでこのあたしがアンタの言うことなんか聞かなきゃいけないの?」
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