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第11話 冒険へ旅立つ!
「頼む! アルボ! リセマラさせてくれ!」
「ですから無理なんですって。少なくともボクにはそんな機能はついてません」
俺は召喚の儀が行われる宇宙空間から、心地よい風が吹く草原の小高い丘へと戻るやいなやアルボに泣きついた。
結局初めての10連ガチャで新しく手に入ったのは
Rコバ
Rパゼラ
Rゾルム
Rゾラム
の4体のみ。
頼みの綱のSR枠は最初に手に入れたSRリーゼが被ってしまうという、大爆死をかましてしまった。
しかもこのゲームで最重要と言われている回復役も攻撃補助役も引けなかった。
確率的にはむしろここまで使えないキャラばかりを引くほうがむずかしい。
これがゲームならリセマラだ。
とっととアンインストールして気に入るまでやり直すべきだ。
または課金すればいい。
課金すればまたガチャが引ける。
だが、今俺はゲームの中にいる。
リセマラも課金もできない。
やり方がわからない。
この手持ちのまま攻略を進めていかないといけない。
ゲームって簡単だったんだな。
だって何度でもやり直しがきくんだもんな。
「あ、おかえり。どうだった? ……ってその様子だとダメだったみたいね」
リーゼは手頃な岩の上にお上品にハンカチを乗せて座って、アルボに泣きつく俺を見ていた。
「最低保証ったよ……」
「あらら、残念ね。ま、せいぜいあたしを大切にすることねー」
と足を軽くばたつかせて上機嫌になるリーゼ。
「ところでSRは誰を召喚したの?」
「……お前だよ」
「私? 私がなに?」
「だからぁ! SRリーゼを引いたって言ってるんだよ!」
「嘘……。ぷふふ! どんだけあたしのことが好きなのよー」
リーゼはケラケラとのけぞって笑う。足をバタバタさせながら。
ムカつくのはムカつくのだが、なんせ皮も良ければ声もいい。
あのゲーム内キャラ人気投票10位以内常連のリーゼが、目の前で笑っている姿をリアルで見れただけで許せてしまう俺は完全にブルファン信者だ。
リーゼがぷるぷると震える俺の目の前に手を差し出していった。
「じゃ、星片よこしなさい。せっかくだから扉を開けてあげるわ」
SRリーゼが被ったことによって『リーゼの星片』というアイテムが手に入っている。
これをリーゼに使うことで『扉を開ける』事ができる。
扉を開けると、リーゼのすべてのステータスを一段回上げることができる。いわゆる限界突破だ。
俺たちはこれを凸すると呼んでいる。
このゲームは最大で4凸まであり最大まで凸することを完凸という。
完凸するとステータスは大幅に上昇した上に特別なスキルまで習得できるという、ソシャゲの最も凶悪な仕組みである。
良く言えば被っても5体目までは無駄にならない、実際は5体引かないと最大値まで強化できないという越後屋も裸足で逃げ出す恐ろしいシステムだ。
俺はただでさえ当選確率の低いSSRのキャラを完凸させるべく課金しまくった。
人生をかけていたといっていい。
おかげで俺のゲーム内での財産は同じゲームをやっている奴らからなら一目置かれるほどになっていた。
だがそれもゲームが終わってしまえばすべて消えるわけだ。
そんなこと考えないようにしていたけど。
そんなこと絶対に起きないと信じていたのに。
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