第12話 はずだったのに

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第12話 はずだったのに

「次はどこにいきます? 順当に第2話攻略に向かいますか?」  ふよふよと俺の顔の横に浮かぶアルボ。  その後ろにはリーゼとRキャラ4人衆が並んでいる。  新しく仲間になったキャラは俺が触れることで意志を持って動けるようになっていた。  バカでかいゾル兄弟に、一部がバカでかいパゼラお姉さん、そして小さなリーゼとさらに小さなコバと、さらにさらに小さいアルボ。  ものすごい凸凹なパーティーが完成した。  あまりに弱そうな編成に顔がひきつりそうになる。  が、顔に出してはいけない。  こいつらにはすでに意志がある。  リーゼのときみたいな失敗は侵さない。 「いや、イベントステージへ連れて行ってくれ」    ソシャゲには基本と言っていい序盤の攻略法が2つある。  一つはとにかくメインストーリーを進めていく方法。  これは、メインストーリーを進めることで開放されるコンテンツが有るゲームに有効だ。  もう一つは、期間限定のイベントステージから進めていく方法。  基本的にソシャゲはイベントの報酬はメインストーリーよりもうまい。でなければだれもイベントなど参加しないからだ。  イベントでは強いキャラが報酬に含まれているパターンも有る。  ガチャキャラほど強くないことが多いが、こちらは確実に入手できるという利点がある。  ブルファンはメインストーリーを進めていくほうがどちらかと言えばやれることが増えていいのだが、こんな貧弱なメンツではすぐに手詰まりになってしまう。  一応5人揃ったのでフルメンバーを組めるようになったことだし、まずは戦力を強化することが先決だ。 「今回のイベントは報酬に『SRルカ』がある。重課金者にとっては使い道がほとんどないキャラだが、無課金や今の俺のような初心者とっては強力な戦力になる。これを手に入れる!」 「なるほど! ではイベントステージ『精霊の森』へワープー」  アルボがくるりと俺たちの周りを周ると視界がぐにゃりと歪んだ。  精霊の森はゲームのときはただの森っぽい緑系の背景と植物の敵が出てくるだけのステージだったが、実際には昼間なのに薄暗い、ひたすら木々に囲まれた深い森だった。  まるでディズニーの世界。  つーか、たぶんディズニーの世界のイメージをパクって作られたんだと思う。  日本人には森ってあまり馴染みがないからな。  どうしても森といえば白雪姫や赤ずきん、または海外のファンタジー映画のイメージが先行する。  似たりよったりになるわけだ。 「俺たちの実力じゃ上級の攻略は無理だ。だがSRルカをゲットするだけなら初級のクリアだけでいい。いくぞ!」  ここで登場するモンスターはおなじみのキャノンイーターの他に、魔人木(まじんぼく)という木に顔がついたようなボスモンスターが登場する。  厄介な攻撃はあるものの初級なら大したことはない。   「ゾム兄弟は前方で敵の攻撃を引き付けてくれ。パゼラはポイズンパウダーで敵を毒状態に。リーゼは後方からバブルウェーブで攻撃。コバは落ちたアイテムひろってくれ!」 「ヘイヘイヘイ! 俺たちの初仕事だ!」 「ホイホイホイ! タンク役はまかせろや!」  勢いよく飛び出していった筋肉で膨れ上がった二人。  いくら見た目の装備や体格で防御力が決まるわけがないのがゲームのお約束とはいっても、パンツ一丁でどうやって敵の攻撃を受けるつもりなんだろうか。  つかコイツラ毎回ヘイヘイホイホイ言うのかな。  言うんだろうなぁ。  わかりやすく区別つかないといけないもんな。双子だし。  早速キャノンイーターに砲弾で殴られる弟のゾルム。  結構鈍い音がした。 「ヘイヘイヘイ! そんなんじゃ俺の筋肉に傷ひとつ付きやしないぜ! もっと元気出していこうや!」  だが、殴られたところがしっかり赤く腫れていた。 「ホイホイホイ! でかいからって俺たちはビビったりしないぜ!」  魔人木の前に立ちはだかる兄のゾラム。  魔人木の振り回した枝がバチンといい音を立ててゾラムの裸体に鞭打った。 「……ほ、ホイ!」  痛いんだ。言葉が出てきてない。  大丈夫かよコイツラ。  鎧つけろよせめて服をはおれよ!
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