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第4.7話 最初の敵を倒してくれて
「どう? あたしが本気を出せばこんなものよ!」
リーゼのお決まりの勝利のセリフが出た。
戦闘はリーゼの主力魔法『バブルウェーブ』で一撃で終了した。
いくら現在では火力不足と言われていても、くさってもSRキャラ。
最初のモンスターはきもちよく倒せるように設計されている。
「さっすがリーゼ!」
「べ、別に。これくらいたいしたことないわ」
「いや、本当にすごいよリーゼ!」
リーゼは褒められることにも弱い。
嬉しさが隠しきれていなかった。
金髪ゴスロリ少女が顔を赤くして膨れているのはリアルではまずお目にかかれない光景だろう。
これをCV付きで聞けただけでこの夢を見た価値があるというものだ。
すごいと思ったのは本当だった。
スマホの画面でみるバブルウェーブは泡が大量に発生して敵を包み込む、ファンシーな可愛らしい魔法なのだけど、実際に目の前にすると、自分の体と同じような大きさのカラフルな泡が勢いよく杖から吹き出していく様子は幻想的で神々しくすらあった。
「『おめでとう! 初めての戦闘とは思えない見事な指揮だったね!』」
アルボがチュートリアルモードで小さな手で拍手をしてくれる。
褒められるようなことは何もしていないのだけど、ソシャゲの始めたてというのは一挙手一投足、全てを褒められる。
ユーザーはそれに機嫌を良くしてついつい次のボタンをタップしてしまうのだ。
俺にはそのボタンは視えなかったけど。
「アルボ、次はホーム画面の説明だったと思うがそのへんは全部省いてくれていいぞ。どうせホーム画面なんて見えないし」
「わかりました。では最初の村にいって最初のクエストをクリアすればチュートリアル終了ということにしますのでそこまで進めましょう」
アルボはいつもの声に戻って言った。
本当に話のわかるやつだ。
俺たちは最初の村であり冒険の拠点にもなるアールボールへ向かった。
草原を歩き、川をわたり、見えてきた小さな集落。
牧歌的で幻想的な風景。
中性ヨーロッパ風の世界をベースに魔法やモンスターが融合した世界。
まさしく日本の「ふぁんたじー」だった。
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