5.夜会*

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そうしてゾフィーの閨の手ほどきは無事に終わり、いよいよ夜会の日になった。 コーブルク公爵家に着いた馬車から降りようとする着飾ったゾフィーを出迎えたルドルフは彼女に手を差し伸べた。ルドルフは婚約者が愛する女性だからこういう態度をとるわけではなく、他に恋人がいても婚約者には最低限の義務を果たそうとする律儀な性格をしていた。そんなことはかえって残酷なのに、27歳になっても男女のことに関して朴念仁なルドルフはまるでわかっていなかった。 普通の婚約者のように2曲続けて踊ったルドルフとゾフィーは、ドリンクを受け取り、友人知人のところをまわった。最後にゾフィーの両親のところに行った後、ゾフィーはまだ話していなかった友人を見つけたので、ルドルフに両親と少し話していてと頼んだ。律儀なルドルフがそれを断るはずはなかった。 ゾフィーがしばらくして両親のところに戻ってくると、彼女の父マティアスとルドルフはいなくなっていた。ルドルフが悪酔いしたようなので、マティアスが休憩室まで送っていったという。ルドルフとの婚約続行に反対するゾフィーの母ビアンカにはあの計画は知られていないようだった。ゾフィーは父とルドルフのところに行ってくるとビアンカに言い、ダンスホールから出る直前にもう1杯グラスを取り、あの小瓶の液体を垂らして一気に飲んだ。休憩室に向かう途中でダンスホールの方に戻るマティアスに出くわし、耳元でささやかれた。 「ここから3番目の部屋だ。アイツがあの女の名前を呼んでも子種を受けるまで我慢しろ」
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