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6.妊娠発覚
夜会の日からルドルフはほとんど自室に閉じこもって誰とも会おうとしなかった。食事運搬など、最低限のことだけ恋人の侍女アンネが世話を焼いていた。父アルベルトはアンネをルドルフと接触禁止にしたかったが、自室に閉じこもったルドルフが食事をアンネからしか受け取らないので、仕方なく世話係に任じた。だが、アンネが部屋の中に入るときはドアを開けっぱなしにし、ドアの外側には他の侍女2人が待機することが条件だった。
ルドルフとゾフィーの両親達は、通常いつ月のものが来るのか、今月は遅れていないかと遠慮ない問いをゾフィーに幾度となく恥ずかしげもなく投げかけた。そうしてあの夜会から1ヶ月と少し経った頃、ゾフィーの妊娠が明らかになった。
彼女の妊娠がわかってすぐにアルベルトはルドルフの部屋をノックしたが、思っていた通り、返事はなく、鍵が内側からかかっていた。
「ルドルフ、開けてくれ。ゾフィー嬢が妊娠した。お前たちは早急に結婚しなければならない」
その声を部屋の中のルドルフだけでなく、廊下にいたアンネも聞いてしまい、ルドルフは私だけを愛していたのではないかとアンネは絶望した。ルドルフはアンネが聞いていたとは露知らず、アルベルトを仕方なく自室に入れた。
「私は夜会でゾフィーの両親と話してから翌日起きるまで記憶がない。ゾフィーと彼女の両親と共謀して私に媚薬を盛ったんだろう?汚いやり方をっ・・・!」
ルドルフの頭の中は怒りでいっぱいになり、アルベルトのシャツの襟をつかんだ。
「これが男児だったらゾフィー嬢ともう二度と関係を持たずに済むからいいじゃないか。そうしたらあの女を愛人にすればよい」
「アンネは愛人になんかしない!アンネ以外の妻なんていらない!」
「平民の侍女風情と結婚したら、お前も平民になるんだぞ!それを避けようにもあの女を養女にする家などあるわけがない」
「それなら公爵の地位なんてどうでもいい!」
「お前だってわかっているだろう?妹の息子に爵位が行ったら妹夫婦がコーブルク公爵家をあっという間につぶすに決まっている!分家のクリストフが継いだとしても同じようなもんだ。あそこの家は一家そろってクズだからな。今、我が国の政情はまだ不安定だから、三大公爵家がしっかりと王家を支えなくてはならない」
先の第一王子廃嫡問題でコーブルク公爵家は政治的打撃を受け、ゾフィーの実家ロプコヴィッツ侯爵家と婚姻関係を結んでその打撃から這い上がろうとしていた。だから、ルドルフの結婚問題は単に世間体や家督継承問題だけでなく、政治問題もはらんでいた。
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