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7.密談
コーブルク公爵がゾフィーの懐妊をルドルフに告げた翌日、アンネがルドルフの昼食の食器を下げようとすると、ルドルフは小さく折り畳んだ紙を外にいる侍女たちに見つからないようにワゴンの上に載せた。その紙には『今夜23時にここに来て』と書いてあった。
アンネは行くかどうか迷ったが、どうしてもゾフィーの妊娠のことを確かめたくてやはりこっそりルドルフのところに行くことにした。
「アンネ、誰にも見つからなかった?」
「はい、大丈夫です」
「そんな他人行儀な口のききかたは止めて」
「でも、ルドルフ様はもうすぐ身重のゾフィー様と結婚される方です」
「あぁ、もう聞いてしまったんだね!不安にさせてごめん。実は先月の夜会で媚薬を盛られてこういうことになってしまったようだ。その間の記憶がないから相当強い媚薬だったんだと思う」
「そのことが仮になかったとしても、私には公爵夫人は務まりません」
「ねぇ、アンネ、そんな冷たいこと言わないで。僕には君が一番大切なんだ」
「でも私にはルドルフ様の大切なご家族と爵位を捨てさせることはできません」
「もしかしたらヴォルフガングの家が君を養女にしてくれるかもしれない。そうしたら僕は家族も爵位も捨てる必要がなくなって君と結婚できる」
ヴォルフガング・フォン・ディートリヒシュタインは、ルドルフの寄宿学校時代の友人で、今も親しく付き合っている。ただ、彼はまだ爵位を継いでいないため、アンネを彼の家の養女にするには現当主の彼の父に頼むしかなかったが、それが実現する可能性は低かった。公爵家が反対しているのに別の家門がわざわざアンネを養女にするわけがない。ルドルフもアンネも口には出さないものの、そのことは十分に承知していた。
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