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「ディートリヒシュタイン様、素敵なお屋敷とお庭ですね!」
「いや、アンネ、うちの領地の城と庭園はこれよりもすごいよ。君にも見せてあげたかったなぁ・・・」
「それが人の家に泊めてもらう人間の言うことか?!」
アンネは慌てて話題を変えたが、ヴォルフガングの目は怒っておらず、むしろ久しぶりに会う友人と冗談を言い合えることを喜んでいるようだった。
「そう言えば、この領都には素敵な劇場があるそうですね。」
「あぁ、王都の劇場には負けるけどね。君を王都の劇場に・・・」
「おいおい、うちの領都の劇場だってすごいんだぞ。なにしろマクシミリアン元王子とその婚約者の真実の愛を題材にした、あのホットな劇を王都の次に公演するんだから」
「やっぱり王都の劇場には負けているんじゃないか」
「公演の順番なんか重要じゃないさ。うちの劇場は王都の劇場よりどの席でも舞台が見やすくていいって評判なんだぞ」
またもや領都と王都の比較に話題が行きそうになったので、アンネが話の流れをそこでぶった切った。
「あれは本当に『真実の愛』だったんでしょうか?」
「えっ?元王子が廃人状態になっても最後まで彼を捨てなかったユリア様の愛ってすごくないか?」
「でも結局悲劇でしたよね。あれは愛ではなくて執着だったとしか私には思えません」
また話が変な方向に行きそうだったので、その話題は強制終了となったが、翌日ルドルフとアンネが観劇するのはその作品の予定だった。観劇の後は劇場の隣にある高級ホテルに宿泊することになった。ヴォルフガングは自分の屋敷に泊まればいいと言ったが、ルドルフは観劇の夜に2人きりで最後の思い出を作りたいと押し切った。
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