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「えっ?け、結婚?!」
「それとも君には婚約者か恋人がいるのか?」
「いえ、家がこんな状況ですから相手に悪くてずっと独身のつもりできました」
「それじゃあ、想い人がいるってことは?」
「仕事しながら、あのタウンハウスを維持して両親が無駄遣いしないように監視するのに精一杯でとても恋愛する暇はありませんでした」
「公爵家に養子に来て後継ぎになるのを了承してくれるのなら、ルドルフの婚約者だったゾフィー・フォン・ロプコヴィッツ嬢とすぐに結婚してもらいたい」
「すぐに?公爵家に行くかどうかは考える時間をいただけませんか?それにゾフィー嬢も気持ちの整理がまだつかないでしょう。すぐに結婚じゃなくて婚約期間をもうけるほうがいいのではないでしょうか?」
「それがそう悠長にやってられないんだ」
「えっ?」
「腹が大きくなってしまってからでは遅いんだ」
「え、え、えぇっー?!」
「しーっ!ちょっと声を抑えて!ええとだね、ゾフィー嬢はルドルフの子を妊娠している。だからゾフィー嬢とすぐに結婚して月足らずで生まれた赤ん坊を君の子として出生を届け出てくれないだろうか」
「どうしてルドルフの子として届けないんですか?」
「あんな死に方をした父の子という枷を孫に負わせたくない」
「私が結婚を断ったら?」
「その時は遠縁の子として我が家で養子にする。ゾフィー嬢は気の毒だけど修道院に行ってもらうことになる」
「そんな!彼女は実家にいられないのですか?」
「ロプコヴィッツ侯爵は未婚で子供を産んだ娘を家にとどめるつもりはないと言っている」
ゾフィーの境遇にラルフは思わず同情してしまった。憐みの心から結婚するのは間違いなのではとラルフは思ったが、貴族では政略結婚は当然のことだ。それなら、政略結婚に子供が付いてきたと思えばいいんじゃないかとラルフは思うことにした。
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