2.従兄のプロポーズ

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・・・コン、コン 「叔母上、僕です」 「ああ、ハインリヒ。入ってそこに座って。――首尾はどうだった?」 「どうもこうも、ゾフィーはまだルドルフに固執していますよ。叔父上がその気持ちを利用してルドルフとの結婚をどうしてもごり押ししようとしてるから、もうそろそろ諦め時かもしれませんね」 「冗談じゃない!それじゃあ、あの卑しいルーカスがこの家を継ぐっていうの!」 「うーん、今の所、ルーカスが家督を継ぐのを防ぐ良案が見つからないんですよね。彼の母方の出自が卑しいのは確かですが、彼は見栄えはいいし、優秀です。社交界で彼の評判を落とす工作活動は僕には荷が重すぎます。それとも何かいい案あるのですか?」 「それを考えてやってくれるのは貴方じゃなくって?」 「僕は面倒なのは嫌ですよ。もう他に婚約者がいる女っていうだけで面倒なのに、その上、家督争い工作まで!?一応、ゾフィーには待つとは言いましたが、叔母上がルドルフとの婚約破棄と僕の爵位継承を保証してくれないのなら、近いうちに僕はもうこの計画から下ります」 「そんな、困るわ!マリアンヌ姉様だって貴方が侯爵になってくれたほうがいいはずだわ!」 「僕を侯爵にしようって考えを母は変えつつあるみたいですよ。僕が他の女性と結婚してその家の爵位を継いでもいいって母は思っているみたいです」 「そんな!なら、ルーカスとルドルフが消えたら?」 「やめてください!いくら僕がクズでも犯罪の片棒を担ぐつもりはないですからね!」 そんなリスクを負うよりも、別の条件のよい婿入り先を探すほうがハインリヒにとって容易だろう。ハインリヒはクズを自認していたが、その性格を他人の前ではうまく隠していて容姿はいいし、学業も中々優秀だったからだ。 ビアンカは、部屋を出て行くハインリヒの背中を憤然としながら見送った。
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