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箱入り娘のゾフィーが舞踏会当日にルドルフの誘惑に失敗しないよう、マティアスは閨の教師を手配した。ゾフィーは抵抗したが、父親にはやはり逆らえなかった。
「お父様、お願いです、そんなことしなくても当日頑張りますから・・・」
「ダメだ、チャンスは1回きりだ。いくら媚薬があっても女から仕掛けるのは経験がないお前には難しいだろう。失敗したらアイツはお前を二度と近づけさせないよい口実にするはずだ」
「そ、そんな・・・」
「ゾフィー、不安に思う必要はない。これは浮気ではない。夫を喜ばせるための技術を習うんだ。破瓜はしないから純潔は守られるし、部屋には侍女が控えていて万一行き過ぎたことがあれば制止させるから、安心しなさい」
父親にそう言われても、結婚まで純潔を守れ、貞淑であれと今まで教育されてきたゾフィーの恐怖と抵抗感はなくならなかった。だから教師が到着する前にゾフィーが逃げ出さないようにマティアスは念のために使用人達に見張らせた。ビアンカがこんなことを知ったら大反対するに決まっているので、教師が来る日は彼女が茶会などで外出する日と決まっていた。
教師の男性は20代半ばぐらい、中性的な美貌と白い肌ですらりとした体つきをしていて、いかにも貴族や金持ち商人のマダムに好かれそうな外見をしていた。
「ゾフィー嬢、初めまして。私はヨナスと申します。ゾフィーと呼んでも?」
そう自己紹介したヨナスは、手慣れた様子で震えるゾフィーの手をとってキスをした。
「ゾフィー、そんなに怖がらないで。力を抜いて。僕の膝の上においで」
ベッドの上に座ったヨナスは、身体を固くして震えるゾフィーを膝の上に載せて後ろからやさしく抱きしめ、顔を彼女の首に軽く押し付けた。2人は何も話さず、ゾフィーはヨナスにその体勢でじっと抱きしめられるままにされていたら、いつの間にかゾフィーの震えは止まっていた。
「今日はゾフィーに気持ちよくなってもらうだけだから、安心して」
そう耳元で熱い息をかけられながらささやかれてゾフィーはほとんど腰砕けになってしまった。
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